都心部で大胆な手口の強盗事件が相次いでいる。一連の広域強盗では指示役とみられる「ルフィ」などと名乗る男や実行役らが摘発されたが、その後も、手荒な犯行や闇バイトで募集した実行役を使い捨てる犯行態様が続く。東京都内では3月以降、高級腕時計店が狙われる事件が続発。より大胆で稚拙な犯行が目立つようになっている。
東京・銀座の高級腕時計店で8日夕、仮面をつけた男らが押し入った強盗事件では、人通りの多い時間帯に堂々と押し入り、防犯ベルが鳴り響く中でもバールでショーケースを割って腕時計を奪い続けた。
犯行時間は約2分間に及んだ。「あと30秒はいける」。警報装置の発報から5~10分後といわれる警備員が駆け付けるまでの時間を計算していたのか、実行役の1人が、他に指示を出していた。奪われたのは約70点。実行役は車で逃走したが、普段でも大勢の警察官が路上で警戒する、国会議事堂や警視庁本部前を通るルートをたどった。追跡から逃れられるはずもなく、約3キロ離れた袋小路で車を乗り捨て、身柄を確保された。
相次ぐ強盗。共通するキーワードは「白昼」「繁華街」「高級腕時計」だ。
渋谷の貴金属店では今年3月、銀座と同様の人通りが多い夕刻の時間帯に男が押し入った。上野の貴金属店では同月の白昼、2人組による強盗事件が発生。繁華街で、目撃されるのを気にせず犯行に及んでいる。銀座事件も通行人らが携帯電話を手に犯行を撮影するなどしていたが、気にする様子はなかった。警察幹部は「犯行が大胆で、ずさんになっている」と指摘する。
奪われたのは高級腕時計や貴金属だ。渋谷が約140点の貴金属で8000万円相当、上野は約45点の高級腕時計で1億円相当。銀座も高級腕時計約70点の2億5000万円相当に上る。
なぜ、あえて目立つ繁華街の店の営業時間内に高級腕時計などを狙うのか。
捜査関係者は「1点でも高額なのが貴金属。都心には、そうした商品を扱う店が多く、確実に押し入ることができる営業時間内に入っている」とみる。銀座の店は、高級腕時計「ロレックス」を専門に扱い、店内には1点約2000万円のロレックスも置かれていた。
渋谷事件の実行役の男は犯行後に家族と警察に出頭し「指示を受けて1人でやった」と供述。上野事件の実行役2人も逮捕された。銀座事件の実行役は、確保された16~19歳の4人とみられるが、警視庁少年事件課は、4人も交流サイト(SNS)の闇バイトなどで集められ、指示通りに押し入った可能性があるとみている。
高額商品を狙う繁華街での犯行は、手っ取り早いがリスクも高く、実行役はいずれも逮捕された。捜査関係者は「リスクは実行役が負う。実行役は使い捨てればよいから、指示役は大胆な犯行を指示しているのだろう」と話した。(橘川玲奈、王美慧)