コロナ禍で“逆転の発想” 「動くトレーニング施設」が示す医療均てん化のヒント

場所を選ばずどこでも仕事ができる。そんな新型コロナウイルス禍で起こった発想の転換は、医療業界にも新たな道筋を示している。その形の一つが、心臓ペースメーカ等を扱う日本メドトロニック社(東京・港区)が導入した、医師向けのトレーニングルームを兼ね備えたトラックだ。コロナ禍によって身動きが取れなくなった地方の医師にも、同社製品の操作技術の習得の場を提供するためにスタートした取り組みだが、現場からは医療レベルの質の「均てん化」(格差是正)や、昨今問題視されている医師の長期労働の解消につながる新たな発想として注目を集めている。

日本メドトロニック社が導入したトラック型の「モバイルトレーニングラボ」(日本メドトロニック提供)
日本メドトロニック社が導入したトラック型の「モバイルトレーニングラボ」(日本メドトロニック提供)

アジア初X線透視装置搭載のトラック

「先日は沖縄に6日間行ってました」─。メドトロニックイノベーションセンター長の何川修一さんがこう説明するのは、「モバイルトレーニングラボ」(MTL)という名のトラックのこと。その名の通り、トラック内にリアルに再現された手術環境で、心臓ペースメーカの挿入など同社製品の扱い方をトレーニングできる、さながら“動く手術室”だ。使用前にトレーニングが必須とされる製品の操作習得の場としてはもちろん、何川さんによると「どんなに優れた医師でも初めての機器を安全に使うのは難しい」そうで、同社ではとくに安全利用のためのトレーニングに力を入れている。

これまでは川崎市にある同社のイノベーションセンターに全国から医師たちが集まり、そこで行われるトレーニングプログラムを通じて技術の習得に取り組んでいた。かつては年間2000ものプログラムが行われ、全国からおよそ5000人が来館していたが、コロナ禍でその状況は一変。全国的な行動制限のもと、第一線の現場でより厳しい感染管理下に置かれた医師たちは、トレーニングといえど外に出ることはできず、同センターへの来館者数は最も少ないときで5分の1まで減少したという。

MTLの内部。前室と合わせると約14畳の広さで、トレーニング時にはスタッフ2人に医師10人ほどが入室できる(撮影:後藤恭子)

そうした問題を解消しようと“逆転の発想”で開発されたのが、トレーニング施設として医療従事者のもとへ直接出向くトラックだ。最大の特徴はアジア初となるX線透視装置を搭載した移動型トレーニング施設。MTLでは不整脈と脊椎手術のトレーニングを行っているが、例えば新製品のペースメーカは従来品と違って脚の血管を伝い、ダイレクトに心臓へと挿入するため、X線画像で常に動きを確認しながらの操作が必須となる。X線装置を導入するにはトラックの壁面に被ばく対策を施す必要があり、その分のコストがかさむが、臨床に近い状況のトレーニング環境を再現することを優先し、多額の費用をかけて設計した。

「実はこうしたMTLのニーズは、多忙な医療従事者のアクセス問題を解消するアイデアとしてコロナ禍前からあった」という何川さん。費用面で踏み切れなかった最後の決断を、「コロナ禍が一気に後押しした格好」だという。

MTLの模型を手に説明する何川修一さん(撮影:後藤恭子)

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