トラック運転手の残業規制が強化される令和6(2024)年4月まで1年を切り、人手不足の深刻化が懸念される「2024年問題」への対応は多くの企業にとって喫緊の課題だ。また、政府が少子化対策に力を入れる中、大企業を中心に今年4月から男性の育児休業取得率の開示が義務付けられた。産経新聞は主要企業118社へのアンケートでこの2つのテーマへの対応を聞いた。
対策の着手に遅れも
2024年問題に危機感を持っているかを尋ねたところ、「強く持っている」「やや持っている」と回答した企業は計70・3%に達した。一方、既に対策を講じている企業は30・5%にとどまり、危機感はあっても対策への着手に遅れが出ている状況が浮き彫りになった。
危機感を持っていると回答した企業からは「従来運べていた荷物が運べなくなり輸送費も上昇する」(重工業)、「荷主側にも負担が強いられる」(保険)などの懸念が上がった。
危機感を「それほど持っていない」「ない」と回答した企業(計9・3%)の多くは、自社事業と物流の関連性が薄いと指摘。「既に本社からの配送回数を限定している」(保険)と、対応済みであることを理由に挙げる企業もあった。
対策を講じているかどうかについては「検討している」の39・0%が最多だった。「既に対策を講じている」と回答した企業とともに具体的な対策内容(複数回答可)を尋ねると、多い順に「(トラックの共有など)物流分野での他社との協業」51・2%▽「配送回数の削減」36・6%▽「物流インフラ(関連施設や人員)の拡充」35・4%▽「配送時間帯の変更」32・9%-となった。
「その他」も43・9%に上り、効率化を狙った「配送ルートの割り当て変更」(飲料)、トラックを避けた「鉄道や船の積極利用」(精密機器)など、物流部門を持つ企業だけでなく、荷主側による物流への負担軽減策も多く挙がった。
物流大手は懸念解消に向け、「サプライチェーン(供給網)に関わる全ての当事者の意識改革と協力が必要になる」との認識を示した。
男性育休の最多100%も期間短く
男性の育児休業取得率について、アンケートで足元の取り組み状況を尋ねたところ、政府が令和7年の達成目標とする取得率50%を既に上回っている企業が53・4%を占めた。100%達成も14・4%に上り、8割超の企業が男性育休を促進するための支援制度を設けていることも分かった。
岸田文雄政権は、重要政策に掲げる少子化対策の一環で男性育休の取得促進にも力を入れており、14%程度にとどまっている取得率について7年に50%、12年に85%に引き上げる目標を掲げている。
取得率のアンケート結果は100%との回答が最も多く、次いで90~99%と30~39%がいずれも11%。具体的に取得率や取得期間の社内目標を設けている企業は66・9%だった。
支援制度を設けているのは83・1%で、検討中を含めると9割超を占めた。具体的には「子供が生まれた社員とその上司へ育休取得を促す『お祝いメール』を送付」(ゼネコン)や「男性育休の取得状況や日数を所属の組織評価に組み込んでいる」(保険)といった回答があった。
一方、取得期間の最多は1カ月~3カ月未満の39%で、1~2週間未満など1カ月未満の期間の回答が合わせて全体の半数近くを占めた。女性の9割超が6カ月以上取得しているのに比べると期間が短い。男性の家事・育児時間が長いほど第2子以降の出産割合が高まるとされる中、取得期間の延長が今後の課題だ。