婦人科の診察に欠かせない「内診」で、台に乗り、下着を着けずに開脚姿勢になることを、「苦手」「恥ずかしい」と感じる女性は少なくない。そうした女性の心身の負担を軽減する工夫が医療現場で広がりつつある。
「婦人科では下着を着けずに下半身を診察されて抵抗感があるのは理解できる。ただ自分の体を守るために必要な診察であることも理解してほしい」
そう話すのは、山王病院(東京都港区)の産科部長で、赤坂山王メディカルセンター(同)でレディース外来を担当する大柴葉子医師だ。
婦人科で内診を必要とする症状は幅広い。妊娠の経過観察や不妊治療、月経トラブル、不正出血。定期的に受けることが推奨される子宮頸(けい)がん検診も内診台に乗って行われる。
対話で負担減
内診台には患者の羞恥心を和らげる目的で、患者側と医師側とを仕切るカーテンがついていることがある。それも負担軽減の一つの工夫といえるが、中には、医師の姿が見えないことで処置への恐怖心が募るという人もいる。
大柴医師はカーテンを使わず患者とコミュニケーションを図ることで心理的な負担感を減らせるように工夫している。
「患者さんが痛みを感じていないか、表情や会話から把握します。例えば、内診台の高さや脚の開き具合について、『このへんでやめますか』と声をかける。医師が次はどんなことをするのか、プロセスを共有することで、診察に前向きになれるかもしれないと考えています」
内診台は「何度経験しても慣れるものではない」と言い、「無理のない体勢で受診できるように、医師には遠慮せず要望を伝えてほしい」と語る。
膣内の様子を診るのに用いる「膣鏡」にも、不快感を緩和するものがある。感染を予防するため、使い捨てのプラスチック製のものが約10年前から普及。従来の金属製に比べて、特有の冷感や金属音がない分、安心感につながるという。
検査用パンツも
苦手な内診を、より苦痛なく受けられるよう「自衛策」を講じることもできる。
医療機器販売会社「日本シーエイチシー」(東京都中央区)が製造販売する「女性検査用パンツ」だ。
不織布製の使い捨てハーフパンツで、股間部分が観音開きになっている。着用したまま内診台での受診が可能で、露出部が少ないことから「恥ずかしさの軽減につながる」と好評だ。
考案したのは乳腺外科医の渡辺久美子さん。内診台に上がった患者が必死に脚を閉じようとする姿に心を痛め、自身も同様のつらさを覚えた経験も踏まえ、開発に至ったという。同社と福島県立医科大の産学連携で商品化された。
数年前から一般向けにインターネット通販を始めたところ、ユーザーからの口コミで導入する医療機関が広がった。同社の古川裕祥社長は「病気の早期発見、早期治療に役立ててもらえたら」と話している。 (動画撮影:三尾郁恵)