米大リーグ(MLB)のブルージェイズに所属する菊池雄星投手(31)が今季、開幕から好調を持続している。4月は4勝を挙げるなど、先発ローテーションの一角としてチームを牽引(けんいん)。好調の背景には、今季から投球間に時間制限を設けた新ルール「ピッチクロック」が、投球にプラスに作用しているとの見方がある。
MLBで5年目を迎えた菊池は今季、5試合に登板して4勝0敗、防御率3・00と白星が先行している。プロ野球の西武時代から菊池の取材を続けているスポーツライターの氏原英明さんは「(菊池は)しっかりとトレーニングをする半面、フルの力で投球しようとして力むことが多かった」とした上で、「(力を)抜くところは抜くなど、投球での力加減が良くなっている」と指摘する。
球団の本拠・トロント(カナダ)の地元紙「トロント・スター」(電子版)は、「安定した菊池、ブルージェイズの続く快進撃」との見出しで特集記事を掲載。記事では「昨シーズンの菊池は何を期待したらいいのかわからなかった。ある試合では実力をみせつけながら、ときには崩れ落ちるなど、その一貫性のなさには閉口した」と好不調の波が激しかった投球を振り返りながら、「今季はその場しのぎの改造ではなく、春季キャンプをフルに使って投球フォームの改造を進めたことは、間違いなく彼にとって手助けになった」と分析。投球フォームの改造が成功したと評価した。
さらに同紙は「ピッチクロックが加わったことで、マウンド上で考えすぎることが制限されたことも、有益だった」と分析。西武時代からマウンドで考え込みやすいタイプだった左腕にとって、今季から導入されたピッチクロックがプラスに作用していると指摘した。
「精神的に平静を保つことで良い仕事」
また、MLB公式サイトも「菊池は昨シーズン、初回に6・86の防御率を記録し、三回には9・95を記録した。何か問題が起きずに序盤を乗り切れることはほとんどなかった」と立ち上がりの悪さを指摘し、「菊池は、110%の力で投げようとするのではなく、精神的に平静を保つことで良い仕事を実現している」と精神面の安定が好投に影響していると分析した。
今季はひげを伸ばすなど、昨季までとは異なる雰囲気をマウンドで漂わせる菊池。氏原さんは「投手としてもともとの能力は高い。あとは1シーズンを通して、安定した成績を残せるかどうか」と話している。(浅野英介)