世界的な新型コロナウイルス禍で激減した訪日客が急回復している。3月の訪日客はコロナ禍前の7割近くまで戻り、ゴールデンウイークに合わせて全国の観光地では受け入れ態勢の整備が急ピッチで進んでいる。
ただ、国際線の運航再開や新規就航が相次ぐ中で、空港における入国審査などが混雑し、長時間待たされる事例も報告されている。早期の態勢強化が欠かせない。
コロナ禍で打撃を受けた観光・宿泊業は従業員を減らしており、需要の急回復に要員確保が追い付いていない。アルバイトの時給も大幅に値上がりしており、人件費の上昇は避けられない。
観光業が今後も安定的にサービスを提供するためには、付加価値の向上が欠かせない。官民で「量から質」への転換に取り組み、要員確保に資する処遇改善を進める必要がある。
日本政府観光局によると、3月の訪日客は181万7500人とコロナ禍前の平成31年3月と比べ約66%まで回復した。中国からの団体客は同国政府の規制が続いており、これが解除されれば訪日客はコロナ禍前に戻る見通しだ。
円安を背景に訪日客の消費意欲は旺盛だ。今年1~3月期の訪日客1人当たりの旅行支出は21万2千円で、コロナ禍前よりも3割程度増えた。欧米だけでなく、アジアからの訪日客も長期滞在する傾向がみられ、観光地の地域経済を押し上げている。
政府が3月に決定した向こう3年間の観光立国推進基本計画では、1人当たりの消費額を伸ばす方針を打ち出した。令和12年に「訪日客6千万人」とする従来の数値目標は据え置いた。
これまでのように訪日客数ばかりを追い求めるのではなく、1人当たりの旅行支出を増やすなど、日本観光をめぐる質の向上を図ることが重要である。それが観光・宿泊業の活性化や観光地の振興などにつながる。
一方、旅行大手のJTBによると、今年のゴールデンウイークの国内旅行者数は昨年に比べて5割以上増えて2450万人にのぼり、調査開始以来の最多を記録する見通しだ。コロナ禍で旅行を自粛していた反動が大きい。
観光地では需要の急回復に対応できず、宿泊を一部制限する動きなどもある。需要増への対処も急がなければならない。