2018年平昌五輪スピードスケート女子団体追い抜き金メダリストの佐藤綾乃(ANA)が産経新聞のオンライン取材に応じ、26年ミラノ・コルティナダンペッツォ五輪を目指す意向を示した。22年北京冬季五輪で同種目の銀メダルを獲得し、1500メートルで4位入賞を果たした26歳は今年度、日本スケート連盟のナショナルチーム(NT)を離れ、「team GOLD」に加入。日本女子のエース、高木美帆(TOKIOインカラミ)、男子短距離の村上右磨(高堂建設)とともに、前NTヘッドコーチのヨハン・デビット氏の指導を受けて活動する道を選んだ。「本当に悩んだが、美帆さんと一緒に練習したかった」などと理由を語り、「3人で高め合いながらやっていけたら」と意気込んだ。
―-新年度が始まった。心境は
「ゼロからのチームということで不安なこともたくさんあるが、環境が変わるというよりは戻るという意味の方が大きいと感じている。今まで長くやってきたヨハンと(高木)美帆さんがいるので、楽しみの方がいまの気持ちは強い」
―-昨季はどういう一年だったのか
「北京五輪の後のシーズンということで、どんな環境だったとしてもモチベーションが上がりにくいシーズンだったと思うが、NTのメンバーが大きく変わって、立場とかが変わり、その中で北京五輪シーズンと同じような結果を出すことの難しさを感じた。だからこそ改めて今年度からやらなければいけないことをしっかり見つけることができた。全体的に勉強になったシーズンだったと感じている」
-―平昌五輪後のシーズンと比べてもモチベーションの点は難しかったか
「平昌(五輪)の次の年は(NTの)メンバーが変わらなかったので、安心感がありながら、モチベーションのところでいうと、次は北京(五輪)というふうに切り替えることがすぐにできていた。もっと個人種目で頑張りたいという気持ちが強くあったので、あまり昨季のような気持ちはなかった。北京(五輪後)は満足していたわけではないが、どこか燃え尽きてしまった自分がいたなという印象はある」
-―北京五輪の1500メートルは1分54秒92で3位と僅差(0秒10差)の4位だった
「悔しい気持ちはもちろんあった中で、それよりも自分がその位置にいけたことの驚きの方が大きかった。メダルとはならなかったが、五輪という大舞台であの結果を出せたことの達成感が大きかったので、あまり悔しい気持ちが大きくなったというのは感じなかった」
―-若返りが進んだ昨季のNTではリーダーとしての役割を期待された
「ずっと先輩たちに引っ張ってもらう立場だったので、その環境に甘えていた自分もよくなかったなと思う。でも、たくさんの後輩たちから『いい刺激を受けた』という言葉も聞くことができたので、私なりに引っ張っていけたかどうかは分からないが、経験を言葉なり行動なりで伝えることはできたのかなと思う」
―-「team GOLD」加入を決めた理由は
「本当に悩んだが、まずは第一に美帆さんと一緒にトレーニングをしたかったというのがあった。(「team GOLD」は)一から始まるものなので、組織的な部分でみるとNTの方が整っているしサポートもしてくれるので、そこから出るのは不安もあった。でも五輪まであと3年で、失敗しても『あと2年(ある)』と考えることができる。何も恐れずにチャレンジできるのが今年かなと、決めることができた」
―-決断した時期は
「ヨハンからは昨季の後半に(チームをつくると)相談を受けたが、シーズンが終わるまでは決めきれていなかった。(シーズン最終戦の世界選手権終了後の3月に)帰国して、親とか、自分のことをよく知ってくれている方々に相談する機会があったので、じっくり考えて決めた」
-―これまでミラノ・コルティナダンペッツォ五輪を目指すことを公言していなかった
「昨季はとにかく一年一年頑張っていきたいと思っていた。ミラノでメダルを取りたいと決めたのも『team GOLD』に参加した理由でもある。そこに向かってやらないのに、なぜこのチームに入るのだろうと考えたときもあった。それを目標にするまでも時間がかかったが、いろいろな人に相談し、特にヨハンは『まだまだ綾乃には世界のトップで戦える力がある』とかなり可能性を感じてくれていたので、そういうのも、もっと頑張りたいなという気持ちにつながった要因だった」
「(北京五輪後にデビット氏がNTのヘッドコーチを退任して)1年離れて、また話してみたときに、こんなに熱い人だったのだというふうに感じた。だったら残りの3年間、ヨハンに預けてみてもいいのかなとちょっと感じていた自分もいたので、それも含めて帰国していろいろな人と話して(「team GOLD」への合流を)決めた」
―-ミラノ・コルティナダンペッツォ五輪の目標は女子1500メートルの表彰台。高木も同じ種目に照準を絞っている
「このチームに入るからには、ミラノでメダルを取るという目標を立てたいと思った。それに向けて頑張っていきたい。(高木と)同じチームということで難しさもあると思う。でも美帆さんに勝てば間違いなくメダルが取れるので、そういう選手が身近にいて一緒に練習できるぜいたくな環境はなかなかない。それは自分の武器にしていきたい」
-―(昨季のワールドカップ男子500メートル総合2位の)村上右磨もチームメートになった
「男子選手ということもあるし短距離選手ということもあるので、美帆さんとはまた違った刺激を得られると思う。去年カナダに行っていろんな刺激を受けたり、勉強になったこともたくさんあったと話していた。そういう話もなかなか聞けないと思うので、その中で自分にできそうなことを吸収していきたい」
「(自身は)ほかの2人には出せない雰囲気とかエネルギッシュなところで、年下ということを生かして元気を分けていけたら。3人で高め合いながらやっていけたらいいと思う」