(セ・リーグ、ヤクルト0-7阪神、5回戦、阪神3勝1敗1分、29日、神宮)覚醒の2発や! 阪神は7-0でヤクルトに快勝。佐藤輝明内野手(24)が五回先頭で先制の2号ソロを放つと、八回にも右越えへ3号2ランをかっ飛ばした。ゴールデンウイーク初日に、希望に満ちた豪快2発&4打点。完全に目覚めた大砲に導かれ、チームは今季2度目の3連勝。貯金を今季最多タイの4とした。
神宮の雨雲を、復活と覚醒のアーチが切り裂いた。長いトンネルを抜けた虎の大砲は本来の輝きを取り戻す。敵地に響き渡った心地いい大歓声を背に、佐藤輝はダイヤモンドを2度、ゆっくりと周った。
「速い球をしっかり打てたので、それはよかったと思います。2本目なんか、ファーストスイングで打てたんでよかったです」
まずは五回先頭の第2打席だ。小川の128キロフォークに、体勢を崩されながらも、最後は右手一本で白球を押し込んだ。自慢のパワーに、神宮の風が味方する。右中間スタンドに運ぶ先制の2号ソロ。これが、2022年5月27日のロッテ戦(ZOZOマリン)以来の決勝弾となった。
この日の佐藤輝はこれだけに飽き足らない。八回無死一塁で迎えた第4打席はカウント1-0から丸山翔の直球を一閃。打った瞬間、スタンドインを確信した。打球は弾丸ライナーで右翼席へ。2022年5月15日のDeNA戦(横浜)以来となる1試合2本塁打に、九回は二ゴロで1打点を加え、計4打点。不振に苦しみ、悩んでいた頃の姿は、もう完全に消えていた。
沖縄での春季キャンプを終え、甲子園に帰ってきた3月。飽くなき打撃への向上心から、佐藤輝は打撃フォームの改造に着手した。1センチ単位で微調整を繰り返し、たどり着いたのはスタンスを〝一足分〟ほど広げること。練習中からノーステップを試すなど、開幕に向け万全の準備を整えたはず…だった。
しかし、野球の神様はプロ3年目の大砲に試練を与える。開幕直後から重度の不振に苦しみ、一時は打率・138にまで落ち込んだ。ベンチスタートのときもあった。
「やってきたことを無駄にしないためにも頑張ります」
それでもなお、変化を恐れず〝最高〟を追求した。暗闇の出口に立ったいまの姿は、復活か進化か-。「それはまだわからないです。でも、いい感じになってきたので。続けていきたい」。あの苦しみがあったから成長できたと、最後に笑って振り返るために、これからはひたすら上昇し続けていくだけだ。