北朝鮮の弾道ミサイル発射を受けた全国瞬時警報システム(Jアラート)を巡り、発令後の情報の訂正など混乱が相次いでいる。現状と今後求められる対応について、福田充・日本大危機管理学部教授に聞いた。(聞き手 大竹直樹)
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「空振り三振」はいいが、「見逃し三振」をしてはいけないというのが危機管理の鉄則だ。政府は北朝鮮の弾道ミサイルが北海道周辺に落下する恐れがあるとしてJアラートを発令したが、後に可能性がなくなったとして情報を訂正した。ある程度の空振りはあり得るということを国民もメディアも理解しなければならない。
情報の精度と速報性はトレードオフの関係にある。ミサイルは最短約7分で東京に到達する可能性がある。発射後5分でJアラートを発令できたとしても避難できる時間はわずかだ。弾道の計算は時間をかければ精度を上げられるが、空振りを恐れず、多少の精度を犠牲にしてでも、情報のスピードを重視すべきだ。
もっとも、訂正が続けば情報が「オオカミ少年」になりかねないため、政府は計算を間違ったプロセスも含め、訂正の中身を丁寧に国民に伝える必要がある。
北朝鮮は戦術核の開発と実戦配備に向けた動きを加速させており、実験から演習にフェーズ(段階)が移っている。ミサイル攻撃は奇襲が前提。次に発射されるミサイルは攻撃かもしれないという危機感を持ち、Jアラートが発令されたらどこへ避難したらいいのか。国民一人一人が真剣に考える時期に来ている。