私が過去に1年間住んでいた歌舞伎町(東京都新宿区)の通称ヤクザマンションには、暴力団の事務所が入居しており、暴力団関係者が常に出入りしている。
ほかに住んでいる人間と言えば、ホスト、スカウト、キャッチなど、アンダーグラウンドな人たちがほとんどであるが、意外にも商業施設もいくつか看板を出している。
歌舞伎町らしい店で言えば、タトゥーショップ。美容室、歯医者、宗教施設などもある。マンションの1階には喫茶店、薬局、チェーンの牛丼屋といった普通の店舗もあるが、この薬局の看板商品は精力剤である。
マンションにいる暴力団組員が牛丼屋を利用することもあり、その際は店内の空気が一変する。昼メシを食べに、その牛丼屋に入ったときのことだった。
「いつになったら出てくるんだオラァ!」
見るからにヤクザ風の男が厨房にいる店員たちに向かって怒鳴っていた。この周辺は日清食品やスクウェア・エニックスの本社があるなど、オフィス街でもある。ランチどきの店内は会社員たちであふれ返っていたのだが、みんな黙って下を向いてしまった。
「スミマセン、スグニツクリマス」