データで読み解く統一地方選

増加する相対的貧困世帯、スマホあっても遠い「普通」

NPO「キリンこども応援団」による食料品の無償配布=大阪府泉佐野市(柿平博文撮影)
NPO「キリンこども応援団」による食料品の無償配布=大阪府泉佐野市(柿平博文撮影)

中間的な所得の半分に当たる127万円に満たない世帯の割合を算出した「相対的貧困率」という概念がある。最新の調査(平成30年)では、日本の子供(17歳以下)の13・5%が該当した。割合にして「約7人に1人」。

一般世帯の所得と比較し、あくまでも相対的に貧しいというカテゴリーだ。毎日の衣食住が苦しく、生存が危ぶまれる絶対的貧困とは異なる。しかし、だからこそ支援は届きにくい。習い事や塾に通えない、希望する進路を諦めざるを得ない…。相対的貧困は子供の将来を閉ざす恐れもある。

「物価の高騰で子供の好物もめったに出してあげられない。給料日前などの食材提供はとても助かる」。大阪府南部で子供3人と暮らすシングルマザー(37)は米や缶詰などの食材を受け取り、ほっとした表情を浮かべた。

これはNPO法人「キリンこども応援団」(同府泉佐野市)による支援活動の一つ。法人側は世帯年収などの制限を設けておらず、毎回利用者が殺到している。

時代とともに日本のような先進国における「貧困」の概念は変わりつつあり、法人の水取博隆代表(40)は「スマートフォンやテレビがあるから貧困じゃない、とは一律に言いづらい時代になった」。貧困世帯とのレッテル貼りを嫌がったり、制度への知識不足が影響したりし、支援につながらない人がどうしても出てくるという。

貯蓄に回せない

貧しさは子供のチャンスを奪う。前述の母親は手取り15万円に届かないパート収入で3人の子供を育てるが、「日々の暮らしは何とかなっても貯蓄にまでは回せない」。長男(10)はサッカーを習いたがっていたが、諦めた。

日本財団は28年、生活保護世帯や児童養護施設などで育ち、貧困状態にあると思われる子供の都道府県別推計を公表。最も貧困状態の子供の数が多かったのは大阪府で、1万7015人に上ると推計された。大阪市が塾代助成事業に取り組むなど対策を講じるが、支援が十分とはいいがたいのが実情だ。

子供の貧困率は、15年の13・7%から上昇を続け、24年には過去最悪の16・3%に。その後やや改善したものの、経済協力開発機構(OECD)の平均12・8%(2017年)を上回る高い水準で推移している。

負のサイクルに

日本の子供はなぜ貧困に苦しむのか。さまざまな要因が指摘されるが、今回はひとり親世帯の数に注目したい。

厚生労働省によると、ひとり親家庭、とりわけ母子世帯数はこの30年間で1・4倍に増加している。データが映し出すのは、母子世帯が抱える苦境だ。厚労省の令和3年度全国ひとり親世帯等調査では8割超のシングルマザーが働いているにもかかわらず、正社員の割合は48・8%だった。平均年収は272万円にとどまり、父子世帯の518万円を大きく下回っていた。学童や保育所に空きがないなど育児支援の乏しさから、安定した職に就けない女性も少なくない。

貧困の放置は国をむしばむ。日本財団は平成27年、子供の貧困を放置した場合と、対策を講じて改善した場合の2つのシナリオを検証。それによると対策を怠った場合、生涯所得は改善シナリオと比べて約2・9兆円少なく、逆に社会保障費の増額などで国の負担が約1・1兆円増えると推計した。貧困による「負のサイクル」を断ち切ることは、日本の将来を考える上での急務といえる。

ベビーシッターや家事サービスを提供する「マザーネット」の上田理恵子社長(61)は、多数の母親の相談に乗ってきた経験から「子育てを1人で抱え込み孤立する母親が増えている」と指摘する。東京都の一部自治体で実施されているベビーシッター利用の支援事業を例に「就労の有無や家族形態にかかわらず、第三者の子育て支援を無理なく受けられる社会にならないと女性が働き続けることは難しい」と訴える。(木ノ下めぐみ)


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