外務省の海外進出日系企業拠点数調査(21年10月時点)によると、中国に進出する日本企業の拠点数は3万1047拠点もある。冒頭のように、中国の在留邦人は約10万2000人もいる。中国に進出する日本企業や、在留邦人はどう対処すべきか。
元警視庁公安部外事課の捜査官で、日本カウンターインテリジェンス協会代表理事の稲村悠氏は「中国当局による拘束は、情報収集や相手国への『みせしめ』の意味もある。中国は現在、医療機器分野に注力している。アステラス製薬の現地法人幹部の拘束は、物品や資料を多く持っている帰国直前を狙い、情報収集を狙った可能性もある。反スパイ法や、国家安全法なども定義もあいまいな法律を制定して、当局は恣意的な運用ができる。日系企業が中国と従来通り取引を続けるならば、リスクは覚悟すべきだ。対応に自信がなければ、関係を清算することも選択肢になるのではないか」と指摘した。
中国・全国人民代表大会常務委員会は昨年末、反スパイ法の改正案を公表した。それまでの全40条から71条に拡充する作業を進めているとされる。さらに、魔の手を伸ばそうとしているようだ。
前出の鈴木氏は「日本政府や企業は、『拘束されないようにする』のではなく、『拘束されたらどうするか』を考えるべきだ。日本外務省は、本人の人権に配慮しながらも『どういう状況で拘束されたか』『どういう活動をしていた人物』かなどの情報を早く国民に知らせるべきだ。中国にどう対応するかや、解放するための方策を第一に考えるべきだ」と語った。