習氏には、プーチン氏と距離を保っている選択肢もあった。とりわけ、インドやブラジルなど「グローバル・サウス」と呼ばれる新興・途上国の支持を得るには、建前に過ぎなくても「中立の仲介者」という顔を維持していた方がいい。
会談直前には、国際刑事裁判所(ICC)がプーチン氏に対して、ウクライナからの子供の連れ去りに関与した疑いがあるとして、戦争犯罪容疑で逮捕状を出した。そんなプーチン氏と握手すれば、中国の評判にも傷が付きかねなかった。
にもかかわらず、あえて「プーチン支援」に舵を切ったのは、同氏を見捨てれば、ウクライナの戦場でロシアが敗北し、プーチン体制が崩壊しかねないからだ。まかり間違って、民主化・親米政権が誕生するような事態になったら、悪夢である。
ロシアの勝利は望めないにしても、なんとかプーチン体制の下で「弱体化するロシア」が生き残ってくれた方が、都合が良かったのだ。そうなれば、中国に依存する以外にロシアが生き残る道はないからだ。
西側の経済制裁を受けているロシアは、中国に格安で原油と天然ガスを提供する見返りに、民生用半導体をはじめ西側製品を供給してもらっている。戦後は、ますます中国依存が高まる。中国は対露貿易を人民元建てにするだけで、事実上、ロシア経済を手中に収められる。