その先に関係人口
ふるさと納税の返礼品は、総務省の「地場産品基準」に基づき、地元産であることが求められる。
例えば、余市町のワインと女性らのNFTアートは、道内在住の作家により地場産のワインが描かれており、基準で示されたオリジナルグッズに当たる。ふるさとCNPも、ウサギたちがその町の観光名所を背景に、地場産品を手にしている。
総務省自治税務局の担当者は「NFTアートは登場したばかりで、返礼品としての評価はまだできていないが、地域活性化などのよい効果が出ることは望ましい」と話す。
ふるさとCNPは、寄付額でいえば総額666万円だが、その先には町のファンである「関係人口」を増やすためのさまざまな仕掛けが用意されている。
寄付してくれた人に実際にその町を訪れてもらえるよう、例えば余市町では、駅前の観光物産施設とホテルの2カ所でQRコードを読み取ると、デジタルアートが「レベルアップ」し、ウサギの背景に雪の結晶などが現れる仕組みを始めた。来年度中には、町内にCNPのキャラクターが描かれたマンホールを設置する予定だ。
また、NFTアートは希少性から転売益が見込まれ、投資の対象ともなっているが、ふるさとCNPは寄付後1年間の転売禁止期間を設けた。余市町の冷水さんは「転売禁止期間があることで、地元とのつながりを持つ機会を戦略的に展開できる」と期待する。
一極集中に対抗
ふるさとCNPなどは現在、全国11市町で採用され、今年中に50自治体を見込む。目標は100自治体。
畠中さんは「返礼品を食べて終わるのではなく、関係人口として地域とつながりを持ち続ける。地域を応援し続ける。これこそが、ふるさと納税の本来の姿ではないかと思う」と語り、こう続けた。
「大好きな札幌の街を拠点に、東京一極集中に対抗する流れを興す。それが国内総生産(GDP)の7割を占める地方の経済発展に不可欠だと考えている。本気で東京一極集中に対抗する会社にしたい」
その理念を実現するため、首都圏以外の地域の人材を優先的に採用し、彼らはフルリモートワークで働いているという。
同社のサイトには「社員マップ」が掲げられ、日本地図上に社員たちがマッピングされていた。札幌市5人、秋田県由利本荘市1人、横浜市1人、福岡市1人、そして熊本市1人。
(坂本隆浩)