プロ野球の開幕が近づく中、阪神のドラフト1位ルーキー、森下翔太外野手(22)=中大=が着実に評価を上げている。春季キャンプは2軍スタートとなったが、実戦では期待にたがわぬ勝負強さを発揮。DeNAを京セラドーム大阪に迎え撃つ3月31日の開幕戦では、「3番・右翼」での先発起用も浮上している。背番号「1」を背負う期待の新人は、プロでどんな第一歩を刻むのか。
「予想を上回ってるな」
多くのファンが期待に胸を膨らませたに違いない。甲子園球場で10日に行われた日本ハムとのオープン戦。「3番・右翼」で先発した森下が、12試合目の対外試合で待望の〝プロ初本塁打〟を放った。
三回無死二塁から初球のストレートを強振。左翼席中段へ運んだ一発に「ええ当たりやったなあ」と目を細めたのは岡田彰布(あきのぶ)監督だ。四回には右中間へ適時二塁打を放ち、広角に打てる技術も披露。ただ、森下自身は「1試合打っただけ。より一層、気を引き締めていかないといけない」と謙虚に語った。
宜野座キャンプは右脚肉離れで出遅れたが、2月中旬に1軍に合流してからの活躍は目覚ましい。キャンプ中の対外試合は6試合で18打数7安打2打点。中でも岡田監督を感心させたのは、途中出場した19日の韓国・サムスンとの練習試合だ。
七回の第2打席で左前打を放つと、1死後、板山の打席でフルカウントからスタートを切り、右前打で一気に三塁を陥れた。この回2度目の打席となった第3打席では、2死三塁から左前適時打。指揮官は「打つもんは使わなしょうがないやろ、はっきり言うて。予想を上回ってるな。俺が(プロに)入った時よりも数段上やな」と賛辞を惜しまなかった。
オープン戦で2本塁打
神奈川・東海大相模高時代は通算57本塁打。中大では1年春からレギュラーをつかみ、大学日本代表でも4番に座った右のスラッガーだ。最大の武器は逆方向にも長打を打てる打撃力。加えて肩も強く、守備と走塁への意識も高い。
「3番・右翼」の最有力候補だった新外国人のシェルドン・ノイジーは腰の張りを訴えて調整が進まず、3月11日の日本ハムとのオープン戦で実戦復帰したばかり。大阪・履正社高で夏の甲子園制覇に貢献した4年目の井上広大や、8年目の板山祐太郎らがアピールする中、森下はオープン戦11試合に出場し、29打数10安打6打点、2本塁打をマーク(17日現在)。規定打席に到達して打率を3割4分5厘まで上昇させ、チームの首位打者に躍り出た。「6番・右翼」での開幕スタメンが濃厚とされているが、岡田監督は3番起用について「可能性はあるんじゃないかな」と言及。阪神の新人が開幕で3番に入れば、1972年の望月充以来、51年ぶりとなる。
ファンの期待は高まる一方だ。甲子園デビューを飾った4日のオリックス戦では、森下の名前がプリントされたフェイスタオルが飛ぶように売れたといい、「選手別の売り上げは森下選手が1位でした」(グッズ担当者)。
もっとも、本人に浮足立ったところはない。今季は新人王を目標に掲げており「初球から積極的に打ちにいきたいので、入りの球種は何が多いかとか、カウントごとの傾向を頭に入れておきたい」。ライバル球団の投手について、データ収集に余念がない。
「目標はエンゼルスの大谷(翔平)選手のような、世界に通用するプレーヤーになること」。昨年12月の新人選手入団発表の際、そう話していた森下は、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の開幕後、こんな野望を口にした。
「ゆくゆくはWBCで核となる選手になりたい」
大物感たっぷりのドラフト1位ルーキーは、どんな活躍をみせてくれるのか。開幕が今から待ち遠しい。(嶋田知加子)