クラウドファンディング市場拡大、広がる支援 一部でリターン不履行や炎上も… トラブル防ぐには?

産経ニュース
スマートフォン手にする人たち =東京都渋谷区(川口良介撮影)
スマートフォン手にする人たち =東京都渋谷区(川口良介撮影)

プロジェクトのための資金を賛同者から集めるクラウドファンディング(CF)の市場が拡大している。矢野経済研究所の調査によると、クラウドファンディングの市場規模は、2021年度で1642億2100万円に上った。利用や認知が広がる一方で、リターン(返礼品)の不履行といったトラブルや炎上も一部で起きており、私的な使い道に対し、「物乞い」「こじき行為」と批判されるケースもあった。改めてクラウドファンディングの意義や、トラブルを防ぐための注意点について考えたい。

震災、コロナで支援広がる

国内最大のクラウドファンディング仲介サイト「CAMPFIRE(キャンプファイヤー)」では、2011年の創設以来、今月10日時点でのべ約7万4000件以上のプロジェクトを掲載し、支援者数は940万人以上、流通額は約700億円に達した。

CAMPFIREのウェブサイトの画面
CAMPFIREのウェブサイトの画面

同社の取締役上級執行役員で弁護士の高山亜希子さんは、「個人や小さなチームであっても、チャレンジに対し、金融機関とは違った枠組みで資金調達の可能性をつくりたいとの思いから、CAMPFIREは生まれた」と創設の経緯を話す。

サイトを見てみると、「火災で失った店舗を復活させたい」「子供食堂を開催したい」など支援呼びかけのほか、「映画を作りたい」「ゲームを制作したい」といったエンタテイメント分野のチャレンジ、さらには、トートバッグや、イヤホンなどの製品も並んでいた。

高山さんによると、クラウドファンディングという言葉が使われ始めた当初は寄付的な色合いがより強く、2011年に起きた東日本大震災の復興支援の受け皿となった。また、近年の新型コロナウイルス禍でも、飲食店などの支援の輪につながった。

「購入型」も増加

一方で、最近は生活を便利にするガジェット用品など、さまざまな製品の新規開発やテストマーケティングにも広く利用されるようになった。支援者も寄付というより、購入目的で利用する人が増えたという。「開発費用など初期費用を、クラウドファンディングで事前に調達することで、大きな企業でなくても、新しい商品を世の中に出していくことができる」(高山さん)とし、利用形態に変化はあっても 、挑戦を応援するという根底のものは、変わらないと強調する。

CAMPFIRE取締役上級執行役員で弁護士の高山亜希子さん(本江希望撮影)

クラウドファンディングには、プロジェクトに対して支援者がお金を支援し、リターンとしてモノやサービスを得る「購入型」や、お礼にとどまる「寄付型」などがある。

購入型の場合、支援金によってプロジェクトが実行され、リターンはその後に届けられるのが基本的な仕組みで、プロジェクトオーナーと支援者には支援契約としての売買契約などが成立する。もし、リターンの不履行など、トラブルが発生した場合には、支援者とプロジェクトオーナーという契約当事者間での解決が必要になる。

高山さんは、強制取り下げや不履行のトラブルは、増えているわけではないが「プロジェクトオーナーがリターンを履行しないまま音信不通に至るケースもまれにある」と明かす。

2017年からは保証制度を設け、現在は、「CAMPFIREあんしん支援保証」として、プロジェクトオーナーの横領や倒産などによるリターンの不履行など、不測の事態が発生した際に、支援金額の80%を上限とし、支援者に保証金を支払うサポートも行っている。

「物乞い」批判も 線引きは?

CAMPFIREに限らず、クラウドファンディングのあり方や不履行などのトラブルをめぐっては、SNSなどで批判の声が相次いでいる。例えば、個人の利益のみ追求する自己満足のためのプロジェクトは「物乞い」「こじき行為」などと呼ばれ、炎上してプロジェクトを取り下げるケースも一部で見られる。

本来、金銭などを恵んでもらう「こじき行為」は軽犯罪法で禁止されている。同法1条は、「こじきをし、又はこじきをさせた者」を拘留または科料に処するとしている。

CAMPFIREでも、こじき行為は利用規約で「極端に特定個人の目的と認められる場合」として禁止されており、サイトの掲載対象にはならない。

一方で、「『アメリカで文化を学びたい』というような、個人的な行動に対する支援であっても、それを社会に発信したり、社会に還元していくということであれば、社会性が出てくるので、プロジェクトとして認め、支援するか否かはユーザーの判断に委ねることになる」と説明する。

高山さんは、「利用者にリスクも含めてクラウドファンディングの仕組みをしっかり伝え続け、今後起こりうる新たな問題にも柔軟に取り組んでいきたい」と話す。

また、クラウドファンディングが日本の寄付文化に与える影響は大きいとの見方を示し、「プロジェクトオーナーは、支援者にリターンを与えるだけでなく、活動報告も行っており、『見える化』が進んだ」と指摘。ともにプロジェクトの成功を喜んだり、新たなつながりができたりすることを通じて「支援を通じたコミュニティーが広がっていくのも特長 」とアピールする。

しっかり説明、リスク把握を

クラウドファンディングに詳しい木村康紀弁護士によると、「購入型」のクラウドファンディングは、特定商取引法の通信販売に該当するとし、「リターンを提供するつもりがなく、実行が不可能なのに募集したのであれば、詐欺にあたる可能性が高い」と説明する。リターンが完成しない可能性があるのに、説明していなかった場合も、実行者は説明義務違反として責任を問われることがあるという。

木村弁護士は、「募集する側は、現在、どのような状況で、どういった目的でお金を集めるのか。リターンについても、完成したものなのか、これから進めるのか、場合によっては使い道が変わる可能性があるのか、しっかり説明することが重要」と訴える。また購入する側も、リスクを把握し、説明を読んで理解した上で支援を判断する必要があると指摘した。(本江希望)



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