プーチン氏の威信失墜 カギ握る国際社会の協力

産経ニュース

【パリ=三井美奈、ワシントン=大内清】国際刑事裁判所(ICC、オランダ・ハーグ)は17日、ロシアのプーチン大統領に対し、ウクライナからの子供連れ去りに責任があるとして、戦争犯罪容疑で逮捕状を出した。国連安全保障理事会の常任理事国の元首にICCが逮捕状を出すのは初めて。身柄拘束は困難とされるが、ウクライナ侵略を巡る戦犯容疑者として扱われることで、国際社会でプーチン氏の威信は失墜し、孤立が強まる可能性がある。

ICCの発表によると、プーチン氏は指導者としてウクライナ占領地からの住民連れ去りに加担し、部下の犯罪を止めなかった責任などを問われた。戦時の文民保護を定めたジュネーブ諸条約は、住民の違法な移送や追放を禁じている。

ICCのカーン主任検察官は、少なくとも子供数百人が孤児院や施設から連れ去られ、多くはロシア国籍を押し付けられて養子に出された疑いがあるとした。ICCは養子縁組を進めたリボワベロワ露大統領全権代表の逮捕状も出した。同代表は子供の権利問題を担当している。

ウクライナのゼレンスキー大統領は逮捕状発行について、「歴史的な決定だ」と歓迎。バイデン米大統領は17日、記者団に「正しいことだと思う」と支持を表明した。米国はICC非加盟だが、カーン氏らの捜査に協力する姿勢を示してきた。欧州連合(EU)のボレル外交安全保障上級代表は「ロシアの責任を追及する過程の始まり」とした。

一方、ロシアは猛反発した。ペスコフ大統領報道官は「言語道断で容認できない」と逮捕状発行を批判。ロシアはICC非加盟であり、ザハロワ外務省報道官も逮捕状は「法的に無効。ロシアは(身柄拘束の)義務を負わない」とした。

ICCが現職の国家最高指導者に逮捕状を出したのはプーチン氏で3人目。他の最高指導者2人の裁判はいずれも実現していない。

ICCはこれまでアフリカのコンゴ民主共和国(旧ザイール)の国内武力紛争を巡り、政府当局が身柄を引き渡した武装勢力指導者を裁くなどしてきた。だが、ロシアが今回、プーチン氏を引き渡すことは望めず、重要となってくるのは国際社会の協力となる。

ICCの加盟国は容疑者の逮捕や身柄引き渡しで協力義務を負う。ICCは拘束を強要することはできず、過去にはICCに逮捕状を出されたスーダンの大統領が周辺国などを外遊していた事例もある。ICCのホフマンスキ所長はこのため、「逮捕状の執行は国際社会の協力にかかっている」と訴えた。

プーチン氏が訪問したICC加盟国が協力するかは見通せない。ただ、拘束される可能性がある以上、ICC加盟国への外遊に慎重にならざるを得なくなることも想定される。国際司法が戦犯としての責任追及の姿勢を明確にしたことで、「各国の指導者はプーチン氏との握手や会談を熟慮する」(ウクライナのコスチン検事総長)との効果を期待する声も出ている。

国際刑事裁判所 ジェノサイド(集団殺害)、人道に対する罪、戦争犯罪、侵略罪を犯した個人を訴追、処罰する常設の国際刑事裁判機関。2003年にオランダ・ハーグに設置された。日本を含む123カ国・地域が加盟。国連安全保障理事会の5常任理事国のうち、米国、ロシア、中国は加盟していない。

ICCは各国の国内刑事・司法制度を「補完」するもの。関係国が被疑者を捜査・訴追する能力や意思がない場合に管轄権が認められる。管轄権を行使するためには、犯罪行為が行われた国または被疑者の国籍国が加盟国であるか、管轄権を認めていることが必要。ウクライナは非加盟だが、管轄権を受け入れている。

露大統領追及へ「最初の一歩」 ウクライナ、侵略罪も目指す


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