文化庁 京都へ

「繊細な日本文化、理解深める入口に最適」元文化庁長官・近藤誠一氏

産経ニュース
元文化庁長官の近藤誠一氏は文化庁移転により、新たな政策提言の可能性が高まると語った=東京都新宿区(関勝行撮影)
元文化庁長官の近藤誠一氏は文化庁移転により、新たな政策提言の可能性が高まると語った=東京都新宿区(関勝行撮影)

日本の伝統文化の発信は東京よりも、年中行事が簡略化されずに充実している京都の方がはるかに環境が整っている。訪日外国人が漠然と感じる日本の良さを言葉で説明するには、文化行政に携わる職員が移転によって、自ら京都を体感することが第一歩になる。職員にとってもそれが力となり、新たな政策の提言になっていく可能性も高まる。

その次にようやく世界への発信となるが、ここが難しい。日本の書籍を翻訳して海外向けに出版する政府のプロジェクトに携わった際、翻訳後の本を読んでみて表現がぴったりの英訳にならず限界を感じた。「わびさび」「粋」といった日本特有の繊細で美しい文化は、「ワンダフル」や「マーベラス」では対応しきれない。

だからこそ、まずは日本に来て茶室に入り、その雰囲気を味わってもらわなければならない。日本文化を味わいたいという外国人が東京よりも京都を目指す中で、文化庁が移転することは理解を深めてもらうチャンスが増えるということ。東北や九州など各地に広がる日本文化の「入り口」として京都はうってつけの場所だ。

当然移転にはマイナス面もある。東京では各省庁や各国の大使館関係者と会って気軽に話すことができた。長官時代、東京国立博物館で台湾の宝物を展示することになった際、開始2日前に企画が中止になりかけたが、直接話し合ったことで回避できた。数時間で問題を解決しなければならない時に大使館や省庁がない京都では対応が難しくなるだろう。それでもプラス面の方が上回っていると確信している。

常々日本が持っている力で使われていない潜在的な力は文化だと感じていたので、文化庁移転は地域の力と文化の力を最大限に発揮できる機会になるだろう。

外務省時代に各国の代表と経済問題を巡って何度か会合を開いたことがあった。議論が行き詰まっていたときの夕食の場で、各国の文化の話で盛り上がった。経済交渉では対立していても、文化の話を通じて親しくなれた。

5月には広島で先進7カ国(G7)首脳会議が開催される。日本文化の中心である京都と原爆が投下された広島は世界に知られる都市。7年に1度、世界のトップが日本に一堂に会し、文化という人間の美と、核兵器という醜さに理解を深めてもらえる絶好の機会だ。文化庁にとっても、移転後の大きな初仕事になる可能性を秘めている。(聞き手 鈴木文也)=おわり

こんどう・せいいち 昭和21年、神奈川県逗子市生まれ。東京大教養学部卒業後、47年に外務省入り。経済協力開発機構(OECD)事務次長や国連教育科学文化機関(ユネスコ)日本政府代表部特命全権大使などを歴任し、平成22~25年に文化庁長官を務めた。31年から国際ファッション専門職大の学長を務めている。

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