岸田文雄首相は17日、重要課題に掲げる少子化対策について首相官邸で記者会見を開き、「これから6年から7年が、少子化傾向を反転できるかどうかのラストチャンスだ」と訴えた。対策の基本理念として、若い世代の所得増などを打ち出した。記者会見の要旨は次の通り。
【冒頭発言】
2022(令和4)年の出生数は過去最少の79万9700人となった。わずか5年間で20万人近くも減少している。2030年代に入ると若年人口は、現在の倍の速さで急速に減少することになり、わが国の経済社会は縮小し、社会保障制度や地域社会の維持が難しくなる。これから、6年から7年が、少子化傾向を反転できるかどうかのラストチャンスだ。この国難にあたって、社会全体の意識や構造を変えていく次元の異なる少子化対策を岸田(文雄)政権の最重要課題として実現していく。
現在、小倉将信こども政策担当相のもとで子供政策の強化について、今月末をめどに具体的なたたき台を取りまとめるべく検討が進められている。これに先立ち、少子化対策の基本理念と方向性を話したい。
基本理念は第1に、若い世代の所得を増やすこと、第2に、社会全体の構造や意識を変えること、そして第3に、全ての子育て世帯をライフステージに応じて切れ目なく支援することだ。
少子化の背景として、未婚率の増加があり、その原因の一つとして若い世代の経済力が挙げられる。若い世代の所得向上に、子育て政策の範疇(はんちゅう)を越えて大きな社会経済政策として取り組む。
短時間労働者への被用者保険の適用拡大や最低賃金の引き上げに取り組む。加えて、106万円、130万円の壁について、被用者が新たに106万円の壁を超えても手取りの逆転を生じさせない取り組みの支援を導入し、さらに制度の見直しに取り組む。
3月末をめどに取りまとめるたたき台の第1の柱として、子育て世帯に対する経済的支援の強化を行う。兄弟姉妹の多い家庭の負担や高等教育における教育負担なども踏まえて、児童手当の拡充、高等教育費の負担軽減、若い子育て世帯への住居支援など包括的な支援策を講じる。
第2は、社会全体の構造や意識を変える。現状、低水準にとどまっている男性の育児休業取得率の政府目標を大幅に引き上げて、2025(令和7)年度に50%、2030(同12)年度に85%にする。目標達成を促すため、企業ごとの取り組み状況の開示を進める。
育休制度自体も充実させる。産後の一定期間に男女で育休を取得した場合の給付率を、手取り10割に引き上げる。非正規に加え、フリーランス、自営業者の方々にも育児に伴う収入減少リスクに対応した新たな経済的支援を創設する。
第3は、全ての子育て世帯を切れ目なく支援する総合的な制度体系を構築する。幼児教育、保育サービスについて、量質両面からの強化を図る。これまで比較的、支援が手薄だった妊娠・出産時から0~2歳の支援を強化し、妊娠、出産、育児を通じて全ての子育て家庭のさまざまな困難、悩みに応えられる伴走型支援を強化する。
4月1日には、日本の省庁の歴史で初めて子供を名称に冠する「こども家庭庁」が発足する。国民の声を引き続き伺いながら、私が指導する体制のもとで必要な政策強化の内容、予算、財源について、さらに議論を深め、6月の(経済財政運営の指針)「骨太の方針」までに将来的な子供予算倍増に向けた大枠を示す。
【質疑応答】
--子供予算の倍増を掲げているが、何を基準に、いつまでに行うのか
「政策の中身を詰めなければ倍増の基準や時期を申し上げることは適当ではない」
--教育国債を検討すべきだとの意見もある
「安定財源の確保、財源の信認確保の観点から慎重に検討する必要がある」