関西電力が子会社の関西電力送配電の託送業務システムを通じて、競合する新電力の顧客情報を不正に閲覧した問題で、関西送配電は17日、関電の従業員がシステムの全情報にアクセスする権限を上司が付与できる状態だったことが分かったと発表した。16日時点で法人営業部門の5人が閲覧できる状態だったことを確認。関電は「営業目的の活用や悪意を持った付与はなかった」と説明した。
両社は17日、今回判明したシステムの不備について経済産業省に報告した。
関西送配電によると、関電の従業員ごとに、アクセス権限を所属部署の課長級以上が画面の項目にチェックを入れて設定する。関電側の権限は限定されているはずだったが、新電力も含めてすべての顧客情報を閲覧できる設定が可能になっているとの報告が16日、関電からあったという。
これまで判明した不正閲覧は、関電側からアクセスできる画面で非公開情報を伏せる「マスキング」がされていなかったことが原因とされていた。
関電が権限を付与された5人と、付与した3人に聞き取りしたところ、5人は「新電力の情報を閲覧できる認識はなく、閲覧している認識もなかった」、3人は「新電力情報の閲覧権限を付与した認識はなかった。付与できるものは問題ないと認識していた」と説明。実際に閲覧があったかは不明という。
両社によると、令和2年4月の分社化までは、離島や山間部などで設備の保守と顧客業務を少ない人数で行う必要があり、関電社員には必要に応じて、すべての情報にアクセスする権限が与えられていた。分社化以降は電気事業法上の「適正な競争関係を阻害」する行為に当たる可能性があり、関西送配電の担当者は「大問題だと思っている」と陳謝。両社は今後詳細な調査を進めるとしている。
関西送配電の土井義宏社長は17日に記者会見し、これまで判明した不正閲覧を受けて報酬の50%を4月から3カ月返納することを表明。社長直下の組織として「コンプライアンス推進本部」を4月から、取締役会の諮問機関として弁護士や学者らによる「行為規制アドバイザリーボード」をなるべく早期に、それぞれ新設し、送配電事業の中立性を確保するとした。