フランス、年金改革法案を強行採択 抗議デモが各地で暴走、200人以上拘束

産経ニュース
年金制度改革の法案に反対するデモ=15日、パリ(ゲッティ=共同)
年金制度改革の法案に反対するデモ=15日、パリ(ゲッティ=共同)

【パリ=三井美奈】フランス政府は16日、憲法で認められた強権を発動し、下院で年金改革法案を採択させると発表した。マクロン大統領は下院で過半数の支持獲得を目指したが、実現できず、脆弱(ぜいじゃく)な政治基盤が示された。同日、強行採択に対する抗議デモが各地で暴走し、仏報道によるとパリで200人以上が一時拘束された。

ボルヌ首相は下院で強権発動を宣言し、「改革は必要。将来の年金制度を(投票という)危険な賭けにさらすわけにはいかない」と述べ、審議打ち切りを正当化した。野党議員は抗議して、相次いで議場を退出。極右「国民連合」や左派野党は、不信任案提出の意向を表明した。可決されれば首相は辞任を迫られる。

法案は現在は62歳の年金受給開始年齢を、2030年には64歳に引き上げ、財政健全化をめざす内容。欧州連合(EU)各国では年金開始は65歳が一般的で、改革は昨年の大統領選でのマクロン氏の公約だった。シラク、サルコジ元大統領を輩出した中道右派野党「共和党」に協力を求め、下院投票で法案を可決させようとして挫折した。世論調査では、7割が法案に反対している。

マクロン氏は17年に大統領に就任。同年の下院選で与党は圧勝し、国鉄や大学の制度改革を次々と実現させた。それが、昨年の下院選で過半数割れに追い込まれた。今回の強権発動で、左右両派の野党との亀裂は決定的となり、移民対策など今後の重要課題でも協力を得るのが難しくなった。政治基盤の脆弱化は、マクロン氏のEUでの指導力低下につながりかねない。

年金改革法案では1月以降、労組の抗議ストが断続的に行われた。パリでは7000トンのごみが放置されたままで、学校や交通機関の閉鎖も相次いだ。労組は、抗議行動を今後も続けると発表している。16日のデモは、パリのほか西部ナント、南部マルセイユにも広がり、放火や商店破壊などの騒ぎに発展した。

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