大相撲春場所6日目(17日、エディオンアリーナ大阪)先場所覇者の大関貴景勝(26)は3敗目を喫し、場所後の横綱昇進は極めて厳しくなった。元大関の平幕御嶽海(30)に押し出された。大栄翔(29)は琴ノ若(25)との小結対決を突き落としで制し、平幕の翠富士(26)、高安(33)とともに全勝を守った。3関脇はそろって勝利。若隆景(28)は竜電(32)を寄り切り、初白星を挙げた。
貴景勝の右足が土俵を割った瞬間、館内の歓声はため息に変わった。子供の頃からの夢が遠のく3敗目。花道を引き揚げる26歳の表情に、悔しさがにじみ出た。
「まだ優勝しないともかぎらないが、厳しいといえば厳しい。もう負けられない状況になった」
土俵下で見守った粂川審判長(元小結琴稲妻)は、今場所後の横綱昇進に厳しい見方を示した。
この日も3日目の正代戦で痛めた左膝にテーピングを巻いて土俵に立ち、立ち合いから頭で当たって積極的に前に出た。だが、攻め切れない。いったん引いた後も再び突き、押しを繰り出すなど執念の攻めを見せたが、最後は粘ることもできずに押し出された。
横綱審議委員会(横審)の横綱昇進の内規は「2場所連続優勝もしくはそれに準ずる好成績」とあり、「優勝すれば」の可能性は残るが、過去のデータ上は完全に崖っぷちに追い込まれた。15日制が定着した昭和24年夏場所以降、横綱に昇進した33人のうち綱とり場所が12勝3敗だったのは3人だけ。4敗はおらず、残り9日間でもう1敗も許されない。さらに6日目時点でトップと3差を逆転して優勝した例も、平成24年夏場所の旭天鵬の1度しかない。
何よりも膝の状態が心配だ。同審判長は「本人しか分からないが、膝の影響はあると思う。もう一つ、二つ、足が出ていない」と指摘する。
貴景勝はこの日もリモート取材に応じず、沈黙を貫いた。兵庫県出身。関西のファンの前で奇跡を起こせるか。(月僧正弥)