《バズーカ砲のような大きな筒を抱え、芸能人が就寝するホテルの一室に忍び込んで爆音を鳴らすという「天才・たけしの元気が出るテレビ!!」の名物企画「早朝バズーカ」。〝バズーカ砲〟を抱えるのは、番組で一躍人気者になった高田純次さんだ。格好よく年を重ね、今では冠番組の「じゅん散歩」や俳優としてドラマなどで活躍する高田さんも、当時は伊藤ディレクター発案の破天荒なロケ企画を次々とこなす番組のレギュラーメンバーだった》
早朝バズーカを発案したきっかけは「早朝ソープ」だったんです。僕は仕事が終わって家に帰るとき、夕刊紙をよく読むんですけど、あれは風営法が改正されたときですよ。深夜0時以降、(性風俗店の)ソープランドの営業がダメになって、早朝ソープっていうのが出現したって、記事に出てたんですよ。
面白いこと考えてるやつがいるなあと思ったわけ。なんでかっていうと、ソープランドって夜に行くもんだという概念があるじゃないですか。いちばん早朝に似つかわしくないもの、それがソープじゃないですか(笑)。早朝っていうと、普通はラジオ体操とか乾布摩擦、ランニングをするとか。早朝イコール健康ってイメージがあります。なのに早朝にソープ。これは面白いって思ったんです。
じゃあ、ソープに代わる早朝に似合わないものは何かって考えるわけです。それで、早朝バズーカを考えたんです(笑)。
《〝バズーカ砲〟を抱えた男が寝室に忍び込んでくるのだ。場合によっては警察沙汰になるなど不測の事態も起きかねない。ドッキリ企画とはいえ、やはり出演者側にはあらかじめ企画の趣旨を伝えるものなのだろうか》
もちろん、言いません。言わないけども、「元気が出るテレビ!!」のロケで行くことは知っているわけですよ。「こんなことをやります」とは言わない。言うのは失礼なんですよ、逆に。
演者さんも分かっているけど、もし言っちゃうと、向こうも「言ってほしくなかった」と思うだろうね。出演交渉でOKするってことは、何も言う必要はないんですよ。今だと「なんで(ホテルの部屋の)鍵が開いているんだ」とかいろいろあるでしょうね(笑)。マネジャーさんは知っていますけど、マネジャーも演者さんには言わないと思いますよ。
《昭和61年12月、ビートたけしさんらの「フライデー」編集部襲撃事件が起き、番組名からしばらく「天才・たけしの」という冠が消えた。翌62年7月、謹慎期間が明け、半年ぶりに主役が復帰する。その大事な収録日に〝事件〟が起きた》
日本テレビのプロデューサーとやりあった記憶はありますね。「なんでこれ、やらせてくれないんですか!」と食ってかかっていったんです。もちろん、やりあっていることは、たけしさんには知られたくないじゃないですか。だから多分、俺がサブ(副調整室)にいたときです。やりたかった演出をやらせてくれなかったんです。須藤薫さんという方がいて、その人の曲を使いたかったんですけど、「それはできない」と言われたんです。だから、「ええ! だったら前もって言ってよ!」って。
ただ、それはよくよく考えたら、俺がバカだったなと思います。俺は純粋に「この曲がいいから」って使っていましたが、日本テレビにしてみれば、自分の関係するところの音楽を使うのは当たり前です。今考えれば、大したことじゃなかった。だから俺は子供だったんですね。あれは俺がダメだったなと思ってます。(聞き手 大竹直樹)