「ほとんどの連中より俺の方がフィリピン社会に詳しいし、勝手も分かっているから、連中もこっちに深入りしてこないところがある。それでも連中の話はいろんなところから耳に入ってきます」
フィリピンに巣くう日本人犯罪グループには、「悪の掟(おきて)」ともいえるような不文律があり、その一つが「狙うのは日本人のみ、フィリピン人に被害を与えない」というものだという。
「いくら日本人が大金を持ってフィリピンでデカい面をしても、フィリピン人同士の結束だけは超えられない。フィリピン人に被害を与える犯罪をやったら即、フィリピン人のギャングにも潰される。マニラの刑務所から犯行の指示を出していたようなやつらも、フィリピン人には一切、害を与えないということを示していた。もしフィリピン人にも危害を加えるような組織だったら、いくらワイロを渡しても、遅かれ早かれ敵と見なされて報復されますよ」
フィリピンでは2016年に発足したドゥテルテ前政権が麻薬犯罪の撲滅を掲げ、警官による容疑者の殺害を容認、8000人以上ともいわれる死者を出した。その中には麻薬と無関係なギャングや反政府組織のメンバーなどもいたが、多くの国民はこれを歓迎した。
「5年ぐらい前、日本の身分を捨ててフィリピン人になって逃げていた暴力団員の日本人とか韓国人も殺されたんです。実際には麻薬取引をしていなかったらしいのに、フィリピン人相手の人身売買をやっていて当局に狙われたという噂です」