最初は歌謡ポップスの趣もあった「SEPTEMBER」を〝ポップス〟に、納得いくまでアレンジすることに妥協はしたくなかった。
「ベースラインはすべて書き譜(譜面で指定すること)です。カッティングでさえもすべてスコアに書き出して、スタジオミュージシャンに自分のイメージを指示しました。ポップス系のミュージシャン同士が相談するヘッドアレンジとは相反する形ですが、そういう風に固めていったら、ポップスにだんだんと近づいていったんです」
さらにこの曲には、ディレクターの宮田茂樹のアイデアも加えられた。
「僕が知らない間に加えられていたんですが(笑)、それがEPOの〝シュビデュバ〟や〝グッバイ〟というコーラスです。クレジットではEPOのアレンジとなっていますが、実際は以前にコーラスグループとして活動していた宮田さんのアレンジ。宮田さん自身もアメリカンポップスを研究していて、EPOにハーモニーを重ねさせたんです。ようやく納得できるポップスのオケができて、そこに松本隆さんの詞とまりやさんの声が乗ったとき、懸念していた歌謡ポップスの色はまったくなくなり、完全なポップチューンになっていました」