参院は15日の本会議で国会に一度も登院せず、議場での陳謝も拒否した政治家女子48党(旧NHK党)のガーシー(本名・東谷義和)議員に除名の懲罰を科すことを、出席議員の3分の2以上の賛成で決めた。ガーシー氏は即日除名され、議員の資格を失った。
国民の負託を受けた国会議員が法案審議や採決に参加せず、国会への登院という最低限の義務すら果たさないのは、自覚を欠いた身勝手な振る舞いというほかない。除名はやむを得ない。
政女党の浜田聡政調会長はこの日の本会議などでガーシー氏の代理として弁明し、「人権侵害であり、民主主義を破壊する。受け入れることは永遠にない」と述べた。反省の色はうかがえない。
海外で政治活動することを公約にして当選したとも訴えていたが、こうした公約は成り立たない。憲法第43条では「両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する」と規定している。国会議員は一部の有権者だけの代表ではない。
さらにガーシー氏側は「当選してからごちゃごちゃ言うのは、後出しじゃんけんだ」と反論した。だが、国会法は召集日に指定された期日に登院しなければならないと定めている。「後出し」という批判は当たらず、むしろ順法精神が根本から疑われよう。
ガーシー氏には歳費や期末手当など計2千万円近くが税金から支給されている。再三の呼び出しに応じず、国会に登院しない人物に支払われていることに、釈然としない国民は多いはずだ。
責任を負うべきは、ガーシー氏だけではない。ガーシー氏は立花孝志元党首から「帰国せず登院せずに議員をやれ」と言われて立候補したと釈明している。党としての責任は免れまい。
比例代表で当選したガーシー氏の除名に伴い、通常なら次点の候補が繰り上げ当選するが、政女党は得票2、3位の候補を離党させるなどして、4位を当選させる方針だ。これも制度を恣意(しい)的に利用し、民意をないがしろにするものである。与野党は立候補の要件など現行法に問題点がないかも検証すべきだ。
立花氏は党首を辞任する一方で、党名変更という不可解な行動に出た。目先を変えるための話題作りなのか。国民を振り回すのもいいかげんにしてもらいたい。