【北京=三塚聖平】中国国営新華社通信は16日、中国共産党中央委員会と国務院(政府)が「党と国家機構の改革案」を公表したと伝えた。党に「中央香港マカオ工作弁公室」を新設する。国務院で香港政策を担当してきた香港マカオ事務弁公室を党中央の直轄組織に事実上変更することにより、習近平指導部が香港政策への関与を強める考えとみられる。
中国の機構改革をめぐっては、2月末の共産党第20期中央委員会第2回総会(2中総会)で、党中央の「集中統一指導」を強化する方針を確認。3月の全国人民代表大会(全人代)では、国務院に関わる機構改革案が採択された。今回は党の権限強化に向けた機構改革の全容が明らかになった。党と国家機関の一体化が一層進むことになる。
香港統治を巡っては、2019年に起きた大規模な反政府デモを受け、習指導部は20年に香港国家安全維持法(国安法)を施行するなど統制を強めた。政策の推進役を党中央の直轄組織に格上げすることで、習指導部の意向をこれまで以上に反映させることを狙っているもようだ。
金融分野では、党に金融安定を担う「中央金融委員会」と、金融システムの指導を担う「中央金融工作委員会」を新設する。中国では資金繰りが苦しくなった地方の金融機関でトラブルなどが起きており、党主導で金融システム不安の解消を図る。国務院には、金融監督機能を集約した「国家金融監督管理総局」を新設する。
また党に「中央科学技術委員会」を新設し、科学技術の強化を党主導で進める。米国が中国経済のデカップリング(切り離し)を同盟国などに呼び掛けていることに対抗する。科学技術省は組織改編を行い、挙国体制で科学技術の強化を進める役割に集中する。
香港メディアでは、公安省と国家安全省を国務院から切り離し、党中央直轄組織に改編するという観測が取り沙汰されていたが、現時点では発表されていない。