50年以上「大役」 標本木「靖国の桜」どう守る

産経ニュース
靖国神社の桜の標本木前で開花を宣言する気象庁の職員=14日午後、東京都千代田区(鴨川一也撮影)
靖国神社の桜の標本木前で開花を宣言する気象庁の職員=14日午後、東京都千代田区(鴨川一也撮影)

全国で最も早い14日に東京都内の桜(ソメイヨシノ)の開花が発表され、花見シーズンが到来した。開花日としても史上最速タイ。開花発表の基準となる標本木は、昭和41年から靖国神社(千代田区九段北)境内の同じ桜の木が担う。標本木となってからでも50年以上たち、老木化が進むが、樹勢回復に努める神社職員の丁寧な手入れに支えられている。

靖国神社では14日、桜の開花発表を待ちわびた大勢の人たちが標本木を取り囲んでいた。晴れやかな空の下、報道陣に加え、参拝客もスマートフォンやカメラを標本木に向けた。午後2時ごろ、東京管区気象台の職員が開花を発表すると、拍手とともに「開花おめでとうございます」という声が飛び交った。

気象庁は「桜の開花」を5、6輪以上の花が咲いた状態と定めており、14日には11輪の開花が確認された。同気象台によると、今年の開花は昨年より6日早く、平年より10日早い。昭和28年の統計開始以降、令和2年と3年に並ぶ史上最速の開花となった。

桜は例年開花から1週間程度で満開になり、今年は18日頃から見頃を迎えるとみられる。

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都内の桜の標本木は当初、千代田区竹平町(現在の一ツ橋)にあった気象庁の庁舎内に存在した。同庁が昭和39年に千代田区大手町へ移転したことに伴い、標本木を変更。庁舎から遠くなく、土地開発などの影響が少なく、長期間観測ができる靖国神社の桜が標本木に選ばれた。

靖国神社によると、現在の樹齢は不明だが、標本木に選定時点ですでに成木だったとみられる。桜は老木になると、花の咲く時期が若い頃に比べ、わずかに早くなる傾向がある。標本木の選定から50年以上たつが、神社では根元の土壌を柔らかくしたり、割った竹を埋めて通気性と通水性を確保したりすることで樹勢回復に努めているという。

東京管区気象台の担当者は「老木化してはいるが、開花時期は周囲と大きな差がない」と説明。代替わりは考えていないという。

標本木は塩害や台風などにさらされ、観測ができなくなる危険性があることから、代わりの副標本木が複数本存在する。都内の桜にも副標本木があるが、「いたずらされる危険性もある」(同気象台)として、場所は公表していない。

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実は、気象庁が季節の訪れの指標として観測しているのは、桜の開花だけではない。かつては「サザンカの開花」や「うぐいすの初鳴」など植物41種目と動物24種目を観測。現在も桜の開花・満開、イチョウの黄葉・落葉(らくよう)、カエデの紅葉・落葉、アジサイの開花、梅の開花、ススキの開花と9種目を続けている。

中でも、桜やカエデ、イチョウは「全国的に生えており、1本の木で長きにわたりデータをとることができる」として、地球温暖化の指標にも活用。実際に桜の開花は年々早まっており、気象庁によると、10年あたり1・1日の変化率で早くなっているという。

都内では桜以外の標本木は、北の丸公園(同区北の丸公園)にある。これらの標本木もいたずら防止の観点などから具体的な場所は明らかにしていない。(吉沢智美)

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