静岡県が県内工区の着工を認めないリニア中央新幹線を巡り、JR東海が主要論点となっている大井川の流量維持策として有力な上流ダムの取水抑制案の実現に向け、流域市町などと調整に入ったことについて、同社は13日、「双方向のコミュニケーションが理解を深めることにつながる」と改めて取り組みの妥当性を文書で訴えた。同県が9日に市町などと個別に接触しないよう求めていたことへの回答。地元側との接し方を巡って一貫性に欠ける主張をする県に対し、同社が異を唱えた形だ。
JR東海による地元への説明を巡っては、静岡県が流域市町などでつくる「大井川利水関係協議会」の規約を通じ、同社に市町などとの個別交渉をしないよう要請。協議会の事務局を務める県を窓口にするよう求めている。今回も取水抑制案の実現に向けた協議入りについて、市町などに了解を得ようとしていた同社に苦言を呈していた。
ただ、川勝平太知事は9日に出したコメントをはじめ、再三にわたって地元との「双方向のコミュニケーション」の重要性を指摘。また、過去にはリニア担当の県幹部(当時)が「JR東海が各市町に行くことを私たちが止めているわけでも何でもない」「接触するのはいいのではないか」と発言していた。
そのため、JR東海は今回の文書で「個別に関係者の率直な意見を伺いつつ、関心を踏まえた双方向のコミュニケーションを行うことの可否について、改めて見解を示してほしい」と逆に県側をただした。
取水抑制案を巡っては、大井川の水源地帯となるトンネル工事現場で掘削中に湧き出た水の「全量」を川に戻すよう県が要求。JR東海は代替策として、上流部の田代ダム(静岡市)で取水抑制をして川に水を還元することを提案。水利権を持つ東京電力側は協議に入る条件として、県や流域市町など関係者の了解を取るよう求めている。