佐賀県上峰町で11、12の両日に指された将棋の第72期王将戦七番勝負(毎日新聞社、スポーツニッポン新聞社主催)の第6局を制し、初防衛を果たした藤井聡太王将(20)=棋聖・竜王・王位・叡王=が記者会見した。「非常に難しい将棋が何度か続いたシリーズ。防衛という結果が出せて、大変うれしく思う」と喜びの表情を見せ、タイトル戦という大舞台での羽生善治九段(52)との対局については、「非常に充実感のあるシリーズだった。その中で、羽生九段の強さを感じた場面も多くあった」と振り返った。
記者会見での主なやりとりは次の通り。
——今シリーズはデッドヒートになった。初防衛を決めた率直な思いを
藤井 内容的にも非常に難しい将棋が何度か続いたシリーズだった。本当に大変な将棋ばかりだったと思うんですが、防衛という結果が出せて、大変うれしく思います。
——挑戦者はタイトル獲得通算100期がかかる羽生九段で、さまざまな戦型が現れた
藤井 羽生九段とタイトル戦で対戦できるのは、私自身も楽しみにしていた。内容としても全て違った戦型になって、一手一手考える展開で、非常に充実感のあるシリーズだった。その中で、羽生九段の強さを感じた場面も多くあったな、と感じています。
——奪取にあと1勝と迫る棋王戦、史上最年少名人がかかる4月からの名人戦に向けた抱負を
藤井 棋王戦、名人戦をはじめ重要な対局が続く。しっかり、いい状態にしていければというふうに思いますし、また少しずつでも実力を伸ばしていけるように、取り組んでいければと思っています。
——今回の七番勝負は第4局までで2勝2敗に。藤井五冠にとっては今までにはなかった星取りだった
藤井 第4局は長考した場面でミスをしてしまって、局面のバランスを崩してしまった。そういう意味では残念だったところもあるんですけど、ただ、改めて(第5局から)三番勝負と気持ちを切り替えて臨めればと思っていました。
——羽生九段の強さをどういうところに感じたか
藤井 今シリーズを振り返ると羽生九段に本当に良い手をたくさん指されたと感じた。考えてみると良い手だな、というのが分かってきた手がある。長時間の対局、時間を使って考えて指す中で、改めて羽生九段の強さを感じるところは大いにあったと思います。
——感想戦を見ても、羽生九段と楽しそうに検討していたのが印象に残っている
藤井 今シリーズは全て違う展開になって、自分自身にとっても経験の少ない将棋も多かった。その中で感想戦も含め、そういった局面を考えることができるというのは、自分にとっても楽しい時間だったというふうに感じています。
——今までの番勝負では特定の戦型になることが多かったが、今回は全て違った戦型だった。どちらが好き、というのはあるか
藤井 戦型、展開が違うのは羽生九段が意図されたところがあったのかな、というふうに思うんですけど、一つの戦型を突き詰めて考えるというのも、それはそれで非常に面白いところもあると思うし、今シリーズは自分自身、経験の少ない新鮮な局面が多く、非常に面白かったですし、勉強にもなったかなと思います。
——羽生九段の振る舞いなどで印象に残っていることは
藤井 羽生九段の第1局終局後のコメントだったと思うが、持ち時間が8時間あっても短いという趣旨のことをおっしゃられていた。その言葉も印象に残りましたし、自分自身もそれを非常に実感したシリーズだったなというふうに思っています。感想戦でも本当にいろいろな検討をすることができて、その点も非常に勉強になったと思います。
——羽生九段について、今シリーズの前と後で印象の変化や気付いた点は
藤井 8時間という持ち時間で6局指すことができて、今まで以上に羽生九段の柔軟さ、積極性というのを感じる場面が多かったと思います。やりづらいように見えるところを掘り下げて、そこに可能性を見いだすのが強さなのかな、と感じるところがありました。
——今シリーズは今後、どんなふうにいきるか
藤井 6局とも全く違う展開になり、自分にとって苦手というか課題となる展開も見えたところがあったと思うので、その辺りを改善できるように取り組んでいけたらと思っています。
——佐賀県での対局は初めて。
藤井 対局は初めてでしたが、祝賀会などで何度も呼んでいただいていて。対局していて初めてという感じはしなかったし、とても快適に対局できたと感じています。