東日本大震災の発生から12年となった11日、事故を起こした東京電力福島第1原発が立地する福島県双葉町の海岸は、静かで穏やかな朝を迎えた。
午前5時半、東の空が赤く染まる。少し明るい空は雲ひとつない快晴。あたりには波の音だけが響いていた。同6時前、水平線からきれいな朝日が昇った。
震災後に整備された新しい防波堤の上で夜明けを待った、会社員の佐藤柊也(しゅうや)さん(24)は、千葉県松戸市から一人で訪れた。北海道出身の佐藤さんは福島の大学に進学、一昨年まで福島市に住んでいた。
「大学には被災して大変な思いをした友人もいた」と話す佐藤さんは「自分は津波や原発事故を経験していないが、福島は大好きな第二の古里。何があったのか分かろうとする努力は続けたい」と、被災地に足を運んだ。日の出を見届けた佐藤さんは「福島の復興には先が見えない複雑な思いがある。でも、今日の朝日は希望の光に見えた」とホッとした様子だった。
原発事故後、福島県内で唯一、全町避難が続いていた双葉町は、昨年8月に帰還困難区域のうち特定復興再生拠点区域(復興拠点)の避難指示が解除された。しかし、2月末時点の町の人口5520人に対し、町内に居住しているのは同町の調べで60人強にとどまっている。