今期A級順位戦、最終一斉対局は3月2日、恒例となった静岡市の『浮月楼』で行われた。
これは当時、静岡に住んでいた徳川家康公が、大橋宗桂の初代名人を認めたことによる名人発祥の地として、毎年静岡市が誘致しているもので、今期は名人戦第2局も行うことが決まっている。
今年は、NHKの大河ドラマで『どうする家康』が放送されているから、静岡市は特に力が入っているものと思う。
最終局を残した時点で、藤井聡太竜王と広瀬章人八段が6勝2敗で並び、降級は佐藤康光九段と糸谷哲郎八段が決定している状況だった。
注目は何と言っても藤井の名人挑戦が成るかで、今進行中の王将戦を防衛し、棋王を獲得すれば最年少での6冠。勢いでもし名人も獲得すれば、一気に8冠制覇も見えてくるからだ。
藤井の相手は稲葉陽八段。稲葉は名人挑戦者になったこともある実力者だ。藤井は角交換腰掛銀から角を捨てて守備の銀を剝がす、駒損の攻めでいきなり稲葉玉に迫る。
攻め切れるかどうかの勝負だったが、うまくつながった藤井の快勝で、この日一番早い終局となった。
もう一局の広瀬の相手は、菅井竜也八段。菅井の三間飛車からお互いに穴熊に囲う、長い将棋となった。