漫画や映画ではナンバープレートに「8888」と刻まれているイメージがある。これは暴力団関係に詳しい知人に聞いたことだが、いまは「888」のほうがヤクザの間で人気があるらしい。8が3つで「ミツバチ」。粋でしゃれた発想である。
〝ヤクザ〟を感じる場面はほかにもある。このマンションのエレベーターホールには、部屋割りが書かれたボードが設置されていて、それぞれ所有者の名前が記されている。私のような賃貸居住者の端くれの記載はないが、個人名が書かれていることもある。
気になって調べてみると、某暴力団組長の名前であった。そのボードから読み取るに、ヤクザマンションの低層階は私が住んでいるような17平方メートルのワンルームで占められ、上層階になるにつれて2LDKなど床面積の広い部屋が増えていく。
暴力団が事務所をワンルームに構えることはまずないので、つまり上層階になるほどヤバいのだ。最上階である14階には何度か足を運んだことがある。部屋の前には監視カメラが設置されており、こちらもやはりくしゃみすらできないような緊張感が漂っていた。
■國友公司(くにとも・こうじ) ルポライター。1992年生まれ。栃木県那須の温泉地で育つ。筑波大学芸術学群在学中からライターとして活動開始。新刊『ルポ 歌舞伎町』(彩図社)が話題。