人間をおかしく、たくましく、愛おしく イッセー尾形の一人芝居「妄ソー劇場」

産経ニュース
「2時間の中であんな人もこんな人もさらけ出したい。それが僕にとっての『ゴージャスな舞台』」と語るイッセー尾形=大阪市北区(鳥越瑞絵撮影)
「2時間の中であんな人もこんな人もさらけ出したい。それが僕にとっての『ゴージャスな舞台』」と語るイッセー尾形=大阪市北区(鳥越瑞絵撮影)

NHK大河ドラマ「どうする家康」で長老格の家臣役を好演するなど、テレビドラマでも活躍中のイッセー尾形が、ライフワークである一人芝居「妄ソー劇場」を4月に大阪・近鉄アート館で上演する。「多様性」という言葉が注目されるずっと前から、イッセーは誰かが決めた「カテゴリー」に収まりきらない人たちの存在を愛し、一人芝居という形で優しいまなざしを注いできた。「自分の等身大」と呼ぶどこかにいそうでいなさそうなキャラクターたちは、おかしく、たくましく、愛(いと)おしい。

ただ笑ってほしい

イッセー尾形=大阪市北区(鳥越瑞絵撮影)
イッセー尾形=大阪市北区(鳥越瑞絵撮影)

1脚のいすや1台の自転車など最小限の小道具が置かれた舞台上で、イッセーが演じるキャラクターが見えない「誰か」と対話を始める。「誰か」にせりふはないが、観客はその会話劇に引き込まれ、何気ない言葉や絶妙な間(ま)に思わず笑う。誰にでもできそうにみえて誰にもできない、40年以上かけて磨いた職人技だ。

一人芝居を演じるイッセー尾形=大阪市阿倍野区
一人芝居を演じるイッセー尾形=大阪市阿倍野区
一人芝居を演じるイッセー尾形=大阪市阿倍野区

約2時間の舞台で演じるネタは7~8本。「文豪シリーズ」として夏目漱石らの作品をテーマにした時期もあったが、新型コロナウイルス禍でイッセーの目は再び現実の社会に向いた。「みんな、どうしてる?」。世間に問いかけ、自分なりに想像して出した答えを発表する場、それが「妄ソー劇場」だ。

サラリーマンや中華屋で働くおばちゃんら市井の人々が主人公になる。特殊詐欺といった社会問題も扱うが、シリアスな要素は巧みに外す。「批判には興味がないし、風刺も好きじゃない。僕は文化人じゃなくて演劇人だから、ただお客さんに笑ってほしい」

愛、暗さ、狂気

人間への愛があふれる「肯定的な笑い」が、イッセーの真骨頂である一方、一人芝居以外の作品では人間の暗さや狂気を見せる瞬間がある。

イッセー尾形=大阪市北区(鳥越瑞絵撮影)

キリシタン弾圧を進める長崎奉行を演じた映画「沈黙-サイレンス-」では、「悪役」という言葉では表しきれない一人の男の多面的な表情を複雑に編み上げ、世界で高い評価を得た。

どこか得体(えたい)が知れず、ときに強烈な印象を与えるその演技は「怪演」と定義されることがある。ところが本人は「それは勝手に作られたカテゴリーで個人にあてた言葉じゃないから、自分の話だとは思えない」とどこ吹く風だ。

永遠の逃げ水追う

どんな枠にもはまらない自身を「場違いなエンターテイナー」と評する。「『やりすぎ』ってよく言われるし、つまはじきの存在。昔はそれが不安だったし今もつらいけれど…。それしかやり方を知らないから、しょうがないよねぇ」。頭をかいて「ヘヘヘ」と笑うしぐさに、シャイな人柄がのぞいた。

イッセー尾形=大阪市北区(鳥越瑞絵撮影)

「人間や作品っていろんな解釈ができる。その『どうにでもいえる』ことが大事だと思うんです。言葉にできず、表現したくてもなかなかできない『永遠の逃げ水』を追いかけていたい」

イッセー尾形、71歳。ネタ作りに没頭する時間が今、一番楽しいという。(田中佐和)

「妄ソー劇場」

4月12~16日。問い合わせは近鉄アート館(06-6622-8802)。

イッセー尾形のワークショップ

4月7~9日の3日間、大阪市阿倍野区のSPACE9で演技のワークショップを行う。3月24日まで参加者を募集しており、対象は25~65歳くらいで、3日間通して参加できる人。定員15人程度。参加費2万円。一人芝居ではなく2人以上の演者が登場する芝居のメソッドを教える。イッセーは「一人芝居は非常に特殊でいびつなので、それを先に教えたらえらいことになる」とした上で、「まずは人としゃべるのはどういうことか、を体験してもらいたい。何かしら若い人に与えられたらうれしい」と話した。申し込みはアーツインテグレート(06-6372-6707)。

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