自動車業界でもインターネット上の仮想空間「メタバース」を活用する動きが広がってきた。日産自動車は8日、車の検討や購入、契約までメタバースで行う実証実験を開始した。ドイツのBMWは工場での活用を進める。ソニーグループとホンダが折半出資するソニー・ホンダモビリティは自動運転を見据え、車内空間でメタバースを使ったエンターテインメントの提供を視野に入れる。
日産と日産東京販売は6月末までメタバースを活用した車両販売の可能性を検証する。メタバースでは自らのアバター(分身)を通じて、コミュニケーションがとれる。
日産の仮想店舗「NISSAN HYPE LAB(ニッサンハイプラボ)」も顧客がアバターの顔や体格、衣服を設定。スマートフォンなどから入場し、ラボ内を自由に動き回れる。
仮想店舗は24時間オープンしており、午前11時から午後8時までバーチャルスタッフが常駐し、車を案内してくれる。購入検討する場合は日産東京販売の営業スタッフが対応する。
ラボ内で自分好みの車を設定できる。顧客は電気自動車(EV)「サクラ」や人気車種の「エクストレイル」など最新モデルのグレードや外観、内観、色を自由に選択し、走行シーンを楽しめる。
今回の取り組みについて、日産のJapan―ASEANデジタルトランスフォーメーション部長の山口稔彦氏は「顧客の接点として、気軽に相談したい潜在ニーズがあると思った」と説明する。日産は実証実験の結果を踏まえ、実用化について検討する。
このほか自動車業界ではBMWがメタバース上で工場を再現し、設備の切り替えなどのシミュレーションを行っている。仮想空間で試せるため、作業の効率化を図れるという。
ソニーホンダは自動運転時に車内空間でゲームや映画などの提供を想定している。川西泉社長は「エンターテインメントはメタバースと相性が良い」と述べ、新サービスの開発を検討している。
メタバースの活用は現状では車の開発や生産、販売、イベントに限られるが、自動車業界は裾野が広く、電動化や自動運転など変革期にある。そうした中で、新たな活用シーンやサービス創出が期待される。