「とにかく、東電憎し、解体しろ、でしたよ」と経済産業省関係者は振り返る。大手電力を発電部門と送配電部門に分ける「発送電分離」論が熱を帯びたのは、東京電力福島第1原発事故の直後。民主党政権下だった。大手電力とそれ以外の企業が対等の条件で送電網を使えるようにして、サービスと価格を競い合わせよう、と改革が始まった
▶しかし解体には至らず、送配電部門の子会社化にとどまる。切り離して独立させる「資本分離」は将来の検討課題として脇に置いた。大手に電力を安定供給させるには部門間の関係をある程度維持しておく方がいい、というのが主な理由だ
▶これをどう解釈したのか、関西電力などは、送配電子会社を通じて競争相手である新電力の顧客情報を盗み見ていた。憎むべき行為である。原発事故から12年となる今年、政府内で資本分離案が再び浮上した。改革は終わらない。今度こそ、つけ入る隙のない制度設計を。