米大リーグで今季から導入される「ピッチクロック」や「守備シフトの制限」などの新ルールがオープン戦で実施され始めた。米メディアによると、2月28日(日本時間3月1日)までに行われた試合の平均時間は2時間38分で、昨季のオープン戦の平均時間3時間から20分以上、短縮された。同期間の平均打率は・282で、昨季の平均打率・259を上回るなど、数字だけで見ると新ルールの効果はてきめんだ。
しかし、実際はそうシンプルではない。5日(同6日)にオープン戦に初先発したメッツの千賀滉大投手(30)は課題に「ピッチクロック」を何度も挙げた。「残り5秒、4秒の数字を見たら一気に焦っている自分がいた。それでも意外と時間があることを把握しながら、もう少し自分のテンポで投げたい」と語った。
新ルールで、投手は走者なしの場合、捕手からボールを受け取ってから15秒、走者ありでは20秒以内で投球動作を開始しなければならない。残り時間を示す電光掲示板はバックネットと中堅にあるが、サインや打者の反応を見たりするなどして、カウントダウンを気にする余裕はない。
チームメートのベテラン右腕シャーザーが、3日(同4日)の登板で打者が準備できる前に投げたとしてボークを取られるケースもあった。タイムを取って一度打席を外した打者がバッターボックスに戻り、タイマーも再スタートした直後。投げる準備ができていたシャーザーが、クイックで投げ審判にボークを受けたのだ。
制限時間はあっても早すぎるのも禁物。一方でルールを守れば早く投げることは戦略になる。ヤンキースの救援ペラルタは20秒で3球を投げ三振を奪い話題になった。
通算391セーブのレッドソックス・守護神ジャンセンは昨年12月からピッチクロック調整に取り組んだという。「九回、走者を抱えた大事な場面で投げる時は試合のペースを落としたいものだ」。映像解析の「スタットキャスト」によると、ジャンセンは昨季走者なしで平均25・6秒、走者ありで平均31・4秒を要した。
それが4日(同5日)の今季オープン戦初登板では1回を投げ、14球を全て15秒内で投げて無失点に抑えた。投球後は「試合に調整は付きもの。今は全く影響ない」と言った。
打者ではカブス・ベリンジャーが「シフトを考えないで、自分の自然なスイングでプレーに臨める」と新ルールに期待。19年のナ・リーグMVPは昨季、打率・210と低迷も、今季ここまでオープン戦5試合で3安打2得点、打率・273と順調に滑り出しているようだ。
今後もいろいろな課題は出てくるだろうが、いずれにしても今シーズンは新しい形の野球を楽しめそうだ。(竹濱江利子通信員)