ウクライナのゼレンスキー大統領は6日、同国軍のザルジニー総司令官や政府高官らと協議し、半年間以上にわたりロシア軍との激戦が続く東部ドネツク州バフムトについて、「撤退せず防衛戦を続ける」との方針を決定した。大統領府が発表した。露軍によるバフムト制圧が迫っているとの観測が強まる中、ウクライナは同市を放棄する考えを改めて否定した形だ。
これに先立ち、米シンクタンク「戦争研究所」も5日、「ウクライナ軍はバフムト市の東部から撤退しているもようだ」としつつ、「同市自体からの撤退を決定したと判断するには時期尚早だ」と分析していた。
オースティン米国防長官は6日、訪問先のヨルダンで報道陣に、仮に露軍がバフムトを制圧しても得られる戦略的利益は限定的だと指摘。ウクライナ軍は同市の後方に防衛線を構築できるとし、「同市の陥落は戦闘の流れが露軍に移ったことを意味しない」と評価した。また、同市が実際に陥落するかや、陥落の時期については言及を避けた。ロイター通信が伝えた。
一方、バフムトでの戦闘に部隊を参戦させている露民間軍事会社「ワグネル」トップのプリゴジン氏は6日、「露軍司令部に弾薬補充を求めたところ、部下が司令部への立ち入りを禁止された」と明かした。同氏は「ワグネルがバフムトから撤退すれば、露軍の全戦線が崩壊する」と警告する動画も同日までに公表。従来も指摘されてきたワグネルと露軍上層部との対立の深まりを改めて示唆した。
露軍は要衝であるバフムトを制圧し、全域の制圧を狙うドネツク州の中心部方面への進出路を確保する狙い。一方、ウクライナ軍は同市で露軍を足止めし、米欧から供与される主力戦車の戦力化を待って反攻に転じる構想を描いている。
バフムト防衛へ兵員補強 ゼレンスキー大統領「最も困難な戦い」