日本銀行は9、10日に金融政策決定会合を開く。2%の物価上昇を目指す大規模な金融緩和は当初2年程度で目標を実現する計画だったが、すでに10年にもおよび、債券市場のゆがみなど副作用も指摘される。このため日銀は昨年12月に市場の予想に反して長期金利の変動上限を引き上げ、金融緩和の持続性を高める措置を取った。4月8日で任期を終える黒田東彦(はるひこ)総裁が最後にサプライズ(驚き)を繰り出すか、市場の見方は交錯している。
2月の東京都区部の消費者物価指数(生鮮食品を除く)の前年同月比上昇率は3・3%。政府の物価高対策の効果で1月の4・3%から鈍化した。ただ、食料品の値上げが続くほか、大手電力の家庭向け電気料金の値上げも控える。一方、春闘は大手企業を中心に大幅な賃上げ表明が相次ぐ。
物価と賃金の緩やかな上昇への期待が高まる中、市場では日銀の政策修正観測がくすぶり続ける。投機筋が日本国債の売りを仕掛けることで、長期金利の指標となる新発10年物国債の利回りは、日銀が上限とする0・5%に張りつく。3日には、一時的に0・5%を突破した。
問題は日銀が次に動くタイミングだ。市場の大方は4月の総裁交代の直前に動くことはないとみている。一方で、今月の会合が政策修正の好機になるとの見方も根強い。
BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは「黒田総裁は置き土産として長期金利の変動上限を1%に引き上げる可能性がある」と予想。次期総裁候補の植田和男氏が修正に動けば「リフレ派(金融緩和積極派)の政治家の反発を招きかねない」として、今月退任する雨宮正佳副総裁らが黒田氏を説得するとの見立てを示す。
第一生命経済研究所の藤代宏一主任エコノミストは変動上限を引き上げると「次の一手が予想され、政策運営が難しくなる」として、今月の会合での変動上限撤廃を予想する。(米沢文)