政府は3日、保釈された被告らの逃亡を防止するため衛星利用測位システム(GPS)搭載端末の装着を命令できる制度の導入を柱とする刑事訴訟法などの改正案を閣議決定した。被告や受刑者に限られていた逃走罪の対象を逮捕中の容疑者にも拡大する。公布後に順次施行、GPS端末装着命令については公布後5年以内に施行する。
逃亡防止を巡っては、日産自動車元会長のカルロス・ゴーン被告(68)が令和元年12月にレバノンに逃亡したことなどを契機に議論が高まった。法制審議会(法相の諮問機関)は3年10月、対策としてGPS端末装着を命じる制度を設けるよう答申していた。
装着命令の対象は、保釈中の被告のうち、海外に拠点のある企業の幹部など海外逃亡のおそれがある被告に限定。空港周辺などの禁止区域に入ったり、端末を外したりしたことが確認された場合は身柄を拘束し、1年以下の拘禁刑を科す。
保釈中の被告の生活状況を報告し、公判に被告と一緒に出頭する義務を負う「監督者」を指定できる制度も新設。監督者には、被告とは別に保証金を求め、義務に違反すれば没収する。
海外に限らず、被告の逃走を抑止するため、保釈中の被告が公判に出頭しないことを罰する「不出頭罪」や、無許可で指定された住居を一定期間以上離れることを禁じる「制限住居離脱罪」を新設し、それぞれ2年以下の拘禁刑とする。
拘禁刑以上の罪で起訴された被告については、これまで出頭が不要だった控訴審の判決公判にも原則、出頭を義務付ける。
また、被告や受刑者に限定されていた逃走罪の対象を逮捕後に逃走した容疑者にも広げ、1年以下の懲役だった法定刑を3年以下の懲役に引き上げる。