楽天モバイルの携帯電話基地局建設を巡る設備運搬の業務委託に絡み、警視庁捜査2課は3日、詐欺容疑で、同社元物流管理部長の佐藤友紀(46)と委託先の物流会社「日本ロジステック」元常務の三橋一成(53)、下請け先の運送会社「トレイル」社長の浜中治(49)の3容疑者を逮捕した。楽天モバイルは令和2年に「第4の事業者」として携帯電話サービスに本格参入。高速大容量の通信規格の第5世代(5G)移動通信システムも大手3社から半年遅れでサービスを始めた。佐藤容疑者は新規参入で楽天が基地局建設を急いでいたのに乗じ、委託先を抱きこむ形で不正な水増しを繰り返していたとみられる。
「工事が進まない」。トレイルの下請けとなる会社に楽天側が基地局建設への協力を求めたのは参入まもない2年秋のこと。関係者によると、基地局建設は「都心部」「郊外」「空白地」という3段階の順序があり、当時楽天側が進めていたのは、郊外の段階だった。
トレイルは物流会社の日本ロジステックを介する形で業務委託契約を行い、部材の保管や搬入を手がけた。関係者によると、楽天にとって基地局建設は最重要課題。「いくら掛かってもいい」。担当になった楽天モバイルの佐藤容疑者もこう説明していたとする。
佐藤容疑者は当初、基地局建設については素人だったが、専門知識を学び、次第に業界用語も使いこなすようになった。関係者は「本当に勉強していた」と評し、トレイルの社長だった浜中容疑者についても「『下請けの潤いが少ない』と話すなど熱心だった」と振り返る。
トレイルは基地局開設を背景に急成長した。信用調査会社「東京商工リサーチ」によると、トレイルの売上高は平成31年3月期は約9億円だったが、令和3年3月期には約92億円、4年3月期は約192億円に上った。
それと呼応する形で浜中容疑者も飲食店で一度に数百万円を消費し、レーシングチームの運営に乗り出すようになった。佐藤容疑者は都心のタワーマンションに居を構え、高級車を複数台所有。「楽天から予算を取ってきた」。豪遊する浜中容疑者が、そう明かす場面もあったという。
捜査2課は佐藤容疑者が犯行を主導したとみて解明を進める。(宮野佳幸、塔野岡剛)