林芳正外相は2日夜、インドに向けてチャーター機で羽田空港を出発した。3日に開催される日本と米国、オーストラリア、インドによる戦略的枠組み「QUAD(クアッド)」の外相会合に出席するためだ。ただ、同地で開かれたG20(20カ国・地域)外相会合(1、2日)を、国会日程を優先して欠席した「外交的損失」「国益の棄損」は甚大かつ深刻だ。ロシアによるウクライナ侵略から1年、米国中心の「自由主義国家」と、ロシアと中国を中核とする「専制主義国家」が火花を散らすなか、日本は存在感すら示せなかった。岸田文雄首相や林氏に「いまは有事」という意識はあるのか。ジャーナリストの長谷川幸洋氏は、岸田政権の異常な思考停止状態に迫った。
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林外相が2023年度予算案の参院審議を理由に、インドで開かれたG20外相会合を欠席した。ウラジーミル・プーチン大統領率いるロシアによるウクライナ侵略戦争が大きな転機を迎えているなか、欠席を決めた判断は「林氏と岸田政権のピンぼけぶり」を物語って余りある。
予算委員会での基本的質疑は、首相以下、全閣僚の出席が慣例化している。重要なのは理解できるが、わずか2日程度、外相が欠席したところで、不都合があるわけがない。その間は、副大臣なり外務省幹部が対応すればいいだけだ。
あくまで外相出席にこだわった自民党や立憲民主党など与野党も問題だが、それに唯々諾々と従った外相も外相だ。世界情勢に対する危機感の乏しさが、見事に露呈したかたちである。
ウクライナをめぐる現状は、どうなっているのか。