4月の統一地方選や5月の先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)を前に、警視庁は2日、夢の島総合警備訓練場(東京都江東区)で道府県警から研修生として派遣された警護担当警察官の訓練を行った。研修生の訓練を公開するのは初めて。昨年7月の安倍晋三元首相銃撃事件後、警視庁での警護研修を拡充。要人警護の機会が少ない地方の警護担当者の能力底上げを図り、全国の警護態勢を強化するのが狙いだ。
銃撃事件を受けて、警察庁は、警護警備の基本的事項を定めた「警護要則」を約30年ぶりに改定した。警察庁の関与を強め、都道府県警が作成した警護計画を事前に審査し、指導、修正する仕組みを導入。警察庁は昨年11月、要人警護と皇室警衛に専従する「警備2課」を新設し、態勢強化を図った。
警視庁でも今春、要人警護を担当する警護課の人員を約50人増員し、定員を300人以上にする。また、警察署の警察官や機動隊員にも警護訓練を行い、警視庁全体で人員を倍増させたという。
ただ、都道府県警間では警護に当たる回数に差があり、警護スキルの格差の解消は今後の課題だ。
これまで道府県警の研修生による警視庁での研修を年1回実施してきたが、事件後には警護担当者の能力底上げを図るため、2回に増やした。若手警察官を中心に、現場経験を増やし、今後中核となるような人材を育てていくのが狙いだ。
昨秋、新たに受け入れを行い、計約40人に倍増。警視庁SPの技術を習得のほか、現場での警護や警護計画の策定などの実務も担っている。
この日公開されたのは、昨年4月から1年間、警視庁で研修した20~30代の警察官約20人の訓練。要人に対してナイフを持って襲い掛かってきた攻撃者を取り押さえる方法や、防護板の使い方などを確認した。警視庁のSPが研修生の動きを見ながら、「しっかり踏み込め」などと指導していた。
今春に地元に戻る山口県警の須藤誠哉警部補は研修を振り返り、「貴重な経験を積むことができた。指導者として警護態勢の強化に努め、あらゆる不法行為を許さない警護を実施する」と話した。警視庁警護課の深井貴課長は研修生について「1年間実務などを通じて真摯(しんし)に取り組んでいただいた。立派な警護員、警護指導者として県に帰ることを確信している」とした。(大渡美咲)