埼玉県戸田市の市立美笹中で1日午後、校舎に侵入し、男性教員(60)を切り付けたとして殺人未遂容疑で現行犯逮捕されたのは、隣接するさいたま市浦和区の高校生の少年(17)だった。同市内で切断されたネコの死骸が相次いで見つかった事件への関与もほのめかしている。不満や衝動を抱えた少年らが「暴発」に至るには予兆があると犯罪心理の専門家は指摘する。
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少年は「切り付けたことは間違いない」「誰でもいいから人を殺したいと思った」と供述している。期末試験中で教室にいた生徒は前部のドアから逃げて無事だったが、一歩間違えば大惨事になるところだった。
少年はネコを殺したことについてもほのめかしているが、思い出されるのが1997年の神戸連続児童殺傷事件だ。「酒鬼薔薇聖斗」を名乗る当時14歳の少年は、事前に複数のネコを殺し、死体を解体していた。
全国の少年鑑別所や、刑務所などで1万人以上を心理分析した東京未来大学の出口保行教授(犯罪心理学)は「社会的に評価されない、認められないという不満から、社会に不安や動揺を与えることで強い興奮を覚えるケースがある。最も弱い動物を殺害することから始まり、第三者に見せつけることで社会に恐怖を与える。やがて飽き足らずに衝動が人へとエスカレートする。『世の中やっていられない』と考え、他人を巻き添えにする『拡大自殺』ともいえる」と指摘する。
戸田市には「全市立小中学校や役所を2月27日に爆破するとともに、子供に危害を加える」という趣旨の文書が届いていた。同様の事例は全国的にあり、今回の事件との関連は不明だが、社会に不安を与えたい人物がいることをうかがわせる。
出口氏は「怒りや不満をあらわにするだけではなく、陰口をたたく、SNSで不満を発信するなど『陰性の攻撃行動』もサインになる。表に不満を漏らしていた人が急に言わなくなり、表情が曇り出すなど態度や言動が変わることもある。家族など周囲が気付けるかが課題だ」と語った。