金融庁は、株式を大量に取得する場合、株式公開買い付け(TOB)が義務となる取引の対象拡大に向けた検討に入った。企業経営に大きな影響力をもつ発行済み株式の3分の1超を取得する際、市場外取引だけでなく市場内での取引もTOBを義務付けることで、企業買収の透明性を確保するのが狙い。法改正も視野に議論を進める。
TOBは企業買収の手法の一つで、あらかじめ買い取り価格などを公表し、不特定多数の株主から株式を買い集める仕組み。株主総会で合併など重要事項を拒否できる3分の1超の株式を市場外で取得する際、TOBの実施が必要となる。一方、市場のみで買い集める場合は、TOBは義務付けられておらず、適用範囲の拡大を求める声が上がっていた。
2日の金融審議会(首相の諮問機関)では見直しに前向きな意見が多く、委員からは「一般株主の利益の確保を十分に考えて議論すべき」といった声があった。今後、作業部会で具体的な検討に入る。
規制の本格的な見直しは、平成18年の法改正以来17年ぶり。前回は、ライブドアが市場外と市場内取引を組み合わせてニッポン放送株を大量取得したことをきっかけに規制が強化された。
ただ、市場内の買い集めは対象外のままだった。令和3年には投資会社が新聞輪転機メーカーの株式を急速に買い集め、両社が激しく対立する事態に発展。制度の盲点を突いたとの批判があった。