<特報>「どこか変だ」海外渡航移植の勧誘受けた男性が語る、ずさんな仲介の実態

産経ニュース
送検のため、警視庁蔵前警察署を出る菊池仁達容疑者=9日午前、東京都台東区
送検のため、警視庁蔵前警察署を出る菊池仁達容疑者=9日午前、東京都台東区

NPO法人「難病患者支援の会」(東京都目黒区)による無許可の海外での臓器斡旋(あっせん)事件で、警視庁に28日、臓器移植法違反容疑で再逮捕された菊池仁達(ひろみち)容疑者(62)からキルギスでの腎臓移植手術を勧められた横浜市の男性(58)が、産経新聞の取材に応じた。わらにもすがる思いで現地に向かったが、トラブルで手術を断念。ずさんな仲介の実態を明かした。

《急速進行性糸球体腎炎》。腎機能が急速に低下する、この難病に男性が侵されていることを告げられたのは令和3年6月のことだったという。人工透析を週3回受ける生活を余儀なくされた。腎移植を受けられれば、透析からは解放されるが、知人からは国内での移植は「17年待つ」とする現実を告げられた。

当時57歳。あと17年待つとなると、74歳だ。「それまで生きられるのか」「順番が来ても手術に耐えられる体力が残っているのか」。悩む日々を送る中、海外移植を知り、支援の会にたどり着いたという。

8月に横浜市の支援の会事務所を訪れ、菊池容疑者と面談した。「はるかに早く移植できる」「ぐずぐずしていると、チャンスを逃す」。そう迫られた。すぐに契約を交わし、約1700万円を支払って、11月にはウズベキスタン経由でキルギスに渡った。

支援の会の斡旋で、他に邦人男女3人が入国していた。「ドナーが来次第、手術できる」。菊池容疑者はこう説明したが、事態は一変した。先に手術した女性が重篤な状態になり、男性は断念を余儀なくされて12月末に帰国した。

ベラルーシやスリランカ…。その後も、菊池容疑者から海外での移植を勧められた。手術の機会をうかがっていたが、報道などで菊池容疑者による仲介の違法性の現実を知り「道が絶たれた」ことを悟った。

思えばキルギスへの入国を周囲に伏せるように菊池容疑者から懇願されるなど「どこか変だ」と感じていた。ただ、手術を受けたいとする願いが、不信感をかき消していたとする。

ずさんな手術を受けなくて済んだが、振り込んだ多額の現金は返ってこず、移植の現実も厳しい。「複雑な心境だ」。そう語る男性は、国内で臓器移植が進む制度作りを望んでいるという。(橘川玲奈)

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