東京五輪・パラリンピックを巡る贈収賄、談合事件により、国民が「スポーツの祭典」に抱く負の印象は、拭い難いものになった。
国民の不信感を決定的なものにしたのは、数々の不祥事があったにもかかわらず、情報公開制度の外に置かれた大会組織委員会の、極めて不透明で無責任なあり方だ。
そこが解決されない限り、国内で今後開かれる大規模な国際競技大会は、不信の目で見られ続けるだろう。中途半端な再発防止策は許されない。
スポーツ庁などのプロジェクトチーム(PT)は、五輪や世界選手権を念頭に置いた大会運営のガバナンス(組織統治)について、指針案を示した。
東京五輪組織委では、理事会が決定事項の追認機関と化し、ほぼ機能不全の状態だった。
その反省から、PTは意思決定の権限を業務執行理事などに委譲する、との改善策を示した。利益相反を監視するため、理事会から独立した管理委員会を設けるよう提示したことも、評価できる。
ただし、役割の細分化は組織の肥大化と人件費の増加を招く。
東京の組織委は費用負担の問題から、職員を官民からの出向という形で受け入れた。結果として利益相反の下地となり、贈収賄や談合事件に発展したことを忘れてはならない。
弁護士や公認会計士、有識者からなるコンプライアンス委員会の設置も掲げているが、やはり費用負担の課題は残る。3月に示される指針に実効性を持たせるためにも、大会ごとの実情に応じた項目の手入れや見直しが必要だ。
情報開示に関する言及も甘い。指針案は、法令で定められた開示対象の情報以外について「主体的かつ積極的な情報開示が求められる」と指摘するにとどまった。
フランスは来年のパリ五輪に向けて特措法を設け、組織委に対する監視を強化している。透明性の担保は避けて通れない。
PTは昨秋からの短期間で、今回の指針案を示した。今後日本で開かれる2025年の陸上世界選手権、26年のアジア大会、札幌が手を挙げる30年冬季五輪など、多額の公費を伴う国際競技大会に疑念を持たれないためである。
現状は、東京五輪が最大の障害となっている。不祥事を生んだ背景の再検証が不可欠だ。