抗菌薬は風邪に効かないにも関わらず、多くの人が「風邪で抗菌薬が処方されている」と誤認しているという実態が、国立国際医療研究センター病院のAMR(薬剤耐性)臨床リファレンスセンターが行った調査で浮かび上がった。風邪症状で受診した400人に対する調査で、およそ半数が抗菌薬を処方されていると回答し、さらに4割の人が抗菌薬の効果として「ウイルスをやっつける」と誤認していた。抗菌薬の不適正使用による薬剤耐性菌の問題が深刻化する一方、患者側で抗菌薬に関する具体的な理解が進んでいない状況に専門家は危機感を募らせている。
若い世代で誤認の傾向顕著
調査は昨年11~12月、過去3年以内にかぜ症状(発熱・のどの痛み・咳・鼻水・くしゃみなど)で医療機関を受診し、「お薬手帳」で処方薬を確認できた20~69歳の生活者400人を対象に行った。
直近のかぜ症状で医療機関を受診した際に処方された薬を調べたところ、抗菌薬が含まれていた人は全体の19.0%だった。その結果をもとに、「処方薬の中に抗菌薬が含まれていると思うかどうか」をたずねたところ、「含まれていると思う」と答えた人は全体で49.3%に上り、半数近くが風邪症状で抗菌薬を処方されていると誤って認識していることがわかった。特に若い世代で多く、20代では58.3%と、最も低い50代の41.2%と17.1ポイントの差があった。
風邪症状で処方された薬の中に実際に抗菌薬が処方されているか否かと、それに対する認識の一致率を確認したところ、全体の一致率(正答率)は66.3%で、約3人に1人が誤認している結果となった。年代別の一致率(正答率)は60代が71.6%と最も高く、最も低かったのは20代で52.8%だった。
自身の処方薬に抗菌薬が「含まれている」と思う197人と、「含まれていない」と思う203人に対し実際の処方の有無を確認した。その結果、「含まれていない」と答えた人では96.6%が実際に抗菌薬の処方がなく、自身の処方を正しく認識していたのに対し、「含まれている」と答えた人の中で実際に抗菌薬を処方されているのは35.0%で、残りの65.0%の人は抗菌薬を処方されていないのにも関わらず処方されたと思い込んでいた。