人工知能(AI)が質問に対し、自然な文章で答える「Chat(チャット)GPT」の活用が広がっている。昨年11月に無料で公開されて以降、「グーグル検索」に代わってインターネットの使い方を大きく変えるとも言われる。一方で、使い方をめぐる弊害も指摘されている。どんなサービスなのか-。
「卒業式は終わりではありません。今後、皆さんは新たなステージに進みます。高校や大学、社会人として、または留学など、それぞれの道を進んでいくことになるでしょう」
チャットGPTのページに「中学校の卒業式の校長先生のあいさつを考えてください」と入力すると、こんな一節を含んだ文章が表示される。一見して人間が考えた文章との区別がつきにくい。
米グーグルに代表される従来の検索ページは、知りたい事象を入力すると関連するサイトの一覧が表示される。これに対し、チャットGPTは直接、文章で回答してくるのが違いだ。
検索サービスに与えた衝撃は大きく、米紙ニューヨーク・タイムズは昨年12月、グーグル幹部が「非常事態」を宣言したと報道。グーグルは今年2月、AIを使った自動応答ソフト「Bard(バード)」を導入すると発表した。チャットGPTの開発企業に投資している米マイクロソフトも自社の検索エンジン「Bing(ビング)」に、対話型の自動応答機能を追加し、開発競争が激化している。
国内では、弁護士ドットコム(東京都港区)が、チャットGPTを活用し、会話形式で回答する無料法律相談サービスを今春、開始すると発表した。AIによる対話の性能が飛躍的に高まったことで、インターネットの活用法が様変わりする可能性がある。
新たな技術に、課題を指摘する声も上がっている。特に神経をとがらせているのが教育現場だ。
フランスの高等教育機関・パリ政治学院は1月、リポート作成などに、チャットGPTを明示せず利用することを禁止した。課題や問題点を問いかけると、論文に転用しやすい文章で回答をしてくれるため、不正や盗作の温床になりかねないためだ。米国やオーストラリアでも、同様の措置が広がっている。
近畿大情報学部の篠崎隆志准教授(情報学)は「今後は使用するのが当然の流れとなり、不正の検出も難しくなる」と指摘する。一方「的確な質問、指示をしなければ質の高い回答は得られず、論理的思考で指示を出す能力の向上には、役立つだろう」とも話す。
回答内容の正確性、過度に依存してしまうことの危険性など、他にも問題点を指摘する声があり、今後、活用方法や悪用防止をめぐって新たな議論が生じそうだ。(織田淳嗣)
次から次に…即座に回答
チャットGPTの文章理解力や要約力を試すため、産経ニュースに掲載された「東京芸大の練習室ピアノ撤去へ 光熱費高騰で経費削減 学生は学業への影響を不安視」(2月14日)の記事を読み込ませ、見出しを作成するよう依頼した。
光熱費の高騰で、東京芸大が維持費のかかるピアノの一部撤去を決めた-という記事に、チャットGPTは「東京芸大、ピアノの撤去に物議-学業への影響懸念も」と回答。「他の見出しもお願いします」と会話形式で再依頼すると、5つの見出しを即座に打ち出し「コストカットが背景」など、別のポイントを強調した案が表示された。文章で褒めると「ありがとうございます!」と対応し、人間とチャットしているような感覚になった。
使い方は
チャットGPTは、メールアドレスと携帯電話番号を登録すれば、無料で使用できる。開発企業「オープンAI」のホームページ( https://openai.com/)からアクセスしやすい。インターネット閲覧ソフト(ブラウザー)上で利用するため、スマートフォン用のアプリはない。
ページ上部に表示される「Try」をクリックすると、ログインかサインアップ(登録)かの選択画面に移行する。
最初はサインアップを選び、メールアドレスと任意のパスワードを入力。電話番号を入力し、電話に送られてきた認証コードを入力して登録する。
最初のログインでは機密情報を入力しないなどの注意喚起が行われ、同意するとログインできる。画面下部の入力窓に質問や要望を入力する。
Chat(チャット)GPT
2015年に設立された米新興企業「オープンAI」が開発。人間の指示に従い、文章や画像を生み出す「生成AI」を活用している。膨大なデータを学習しており、文章作成、翻訳、要約からプログラミングのコードの作成もできる。広告のキャッチコピーや舞台や映画の脚本づくりなどの応用が期待されるが、誤情報が拡散するリスクもある。昨年11月に無料公開され、利用者数は1億人を超えたとされる。