立憲民主党は党大会を開き、「野党第一党として国民に新たな選択肢を示す大きな責任を負っている。信頼回復と党再生に全力で取り組む」などとする令和5年度の活動計画を決めた。
立民の支持率は低迷し国民から十分信頼を得られていないばかりか、選択肢を示す責任も果たせていない。立民はこの現実を深刻に受け止めなければならない。
党大会で泉健太代表は「この10年間、日本は周辺国との関係において緊張を緩和することができたのか。むしろ緊張が高まっている。対話を続け、平和な周辺環境を作る」と述べた。緊張を高めているのは、ウクライナ侵略を続けるロシア、台湾併吞(へいどん)をにらみ軍事的圧力を強める中国、日本海へ大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射を続ける北朝鮮である。
対話は確かに重要だ。だが、抑止力、防衛力が裏打ちされていなければ相手に足元をみられ、まともな交渉は難しい。集団的自衛権の行使を一部容認した安全保障関連法を成立させ、反撃能力の保有を掲げた国家安全保障戦略(NSS)など安保3文書を閣議決定したのは、自公政権だ。
泉氏は演説で、抑止力を高める必要性には言及せず、「自民党政権で失われた外交、平和を取り戻す」と語った。現実を直視できない政党には国の舵(かじ)取りを任せられない。泉氏のような主張をして喜ぶのは周辺の専制国家だけだ。
国の根幹をなす憲法改正についても、泉氏は触れず、活動計画にも具体的な記述がなかった。
与野党は今国会初となる衆院憲法審査会を3月2日に開催することで合意した。3月にずれ込んだのは、立民が「予算審議を優先すべきだ」などと早期開催に難色を示したからだ。憲法議論に後ろ向きとみられても仕方あるまい。
昨年の臨時国会の衆院憲法審では、緊急事態条項の新設をめぐり国会議員の任期延長について論点整理が行われた。南海トラフの巨大地震や首都直下地震などの大災害や有事への備えとして、今国会では合意形成が急がれる。立民は衆院憲法審で同性婚に関する議論も求めているが、党として憲法のどこをどう改正すべきだと考えているのか具体案を示すべきだ。
国民を守るための現実的な安保政策と憲法改正に向けた真摯(しんし)な姿勢なしには、国政を担う資格を得られないと肝に銘じてほしい。